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第八十話 変化

 午前中の競技は大半が終わり、残すは二人三脚のみとなった。この種目も予選はなく、一発勝負となる。かといって全クラス同時に走り出すのではなく、何組かに分かれてタイムで順位を決めることになる。

「まあ、うちのクラスは出場しないから関係ないかな」

「何言ってんだ旦那。出場しろよ」

「そうだよー」

男相手しみずとならまだしも、女子タツミとペア組んでなんか出れるか。俺の心には尊厳と羞恥心が同居してるんだ。お前らと違って」

「失礼だな。俺たちのどこが羞恥心がないって言うんだ」

「羞恥心のあるやつは人前でオタ芸を披露しない」

「それは置いておいて」

「強引に話を切りかえるな」

「出場しなって。体育祭は参加することに意義があるんだぞ?えらい人が言ってた」

「校長を偉い人と呼ぶなら、確かにそう言ってたな。長縄に参加したし、午後の応援合戦にも出るぞ?だからオッケーだろ」

「どっちもクラス全員の強制参加種目じゃんー。つまんないよー」

「体育祭に面白さを求める生徒がどこにいる。一応授業の一環だぞ」

「あそこー」

 石井が指で示した先には、狂ったように応援する最高学年の先輩方。肩を組み、体を揺らしながら応援歌を歌う姿は常軌を逸していると言わざるを得ない。中には冷静で通っていた我らが水泳部の元部長もいるし……。受験勉強が変えてしまったのか?そうなのか?

「……恐るべし大学受験……」

「ああなりたくなかったら、今この二人三脚に出場することだ」

「趣旨変わっとる!?」

「そうですよ。参加しなさい」

「健三さん」

「今、我がクラスは藤田先生のクラスに点数で負けています」

「しかもー、それなりに点差が開いてるよねー」

「そうです。その点差を少しでも返すため、不戦敗など認めません……あくまで教師として」

 後付けですよねその理由!

「でもですね?俺がよかったとしても二人三脚にはもう一人必要なんですよ?」

 タツミだって恥ずかしいだろう。もし出ようもんならからかわれることは間違いない。害はあっても利はないのだ。おまけに、少し前から避けられてる気がしないでもない。

「わかりました。石川さんが良ければ出るのですね?」

「そこまでは言って……」

「かもん、れっどすねーく」

 そのネタがわかる人はこの世代にいるのか?

「お呼びですか?マスターケンゾウ」

 HR副会長?いいのかこんなノリについてきてしまって?間違った道に進んでるぞ。

「石川さんを出場させるよう説得してきてください」

「わかりました。三井君、期待しててください。ミッションは必ず成功させます」

「俺は成功を求めてないから」

 頼むから欠場させてくれ。

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