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第七十九話 工作

 長縄が終わった後のリレー種目では、うちのクラスは残念ながら決勝に進めず。運動神経があまり良くない、精鋭陣から外されたメンバーだからやむを得ないか。

「俺も本来、そのメンバーだったわけだしな」

「やっぱ、ただ走るだけの種目はつまらんよなー、旦那」

「そうだよねー。障害物競走みたいなー、色モノ競技こそ体育祭の華だと思うなー」

 色モノ競技と言っておきながら、体育祭の華と断言するのはどうかと。

「高校生が真剣に、全力疾走するのは青春って感じでよくないか?」

「そんなこと言ってもー、実力あるクラスは予選では手を抜いてるしねー」

「そうそう。いくら頑張っても陸上部、野球部とかを集中して配置してるクラスには勝てんよ」

 そうなのである。体育祭ではクラスマッチと違い、チームワークなどより純粋な身体能力を競うものばかり。よって波乱万丈な展開はほとんどなく、予想通りの流れで進んでしまう。バトンパスも予選では安全策を取るところがほとんど。だから燃えようがない。

「しかし次は、うちが有利なトライアスロンだろ?予選なしの一発勝負だし、浜ちゃんの応援頑張ろうぜ」

「旦那、そう楽観視するのはよくないな」

「む?」

「トライアスロンに参加する選手が水泳部なのは、うちだけじゃないってこった」



 義人の言ったように、トライアスロン出場選手には、見覚えのある顔が揃っていた。

「旦那、トトカルチョでもやるか?」

「堂々と博打に誘うな……しかし予想するのはいいかもしれんな」

「優勝候補筆頭はー、現部長の池山先輩かなー?」

「田村も捨てがたいな。元部長もいい線行くと思うが」

「ブランクがあるしねー。あとは松ちゃんとマサかなー?」

「どいつもこいつも強敵ばっかだな……まあ競技するのは俺じゃないけど」

 気楽に応援するかな。誰が勝っても問題ない。

「そんなことでどうするんですか、あなたたち」

「健三さん?」

「藤田先生のクラスの選手は……片山ですか。ちょっと行ってきます」

 どこにですか……あ。マサと接触してる。

「…………」

「…………」

「何か話してるな」

「マサに何か渡してる?」

「あー、藤田先生出てきたー」

「健三さんの頭をひっぱたいたな」

「そのまま強制退場させられてる……何したんだあの人」

 真相を知ろうとマサに話しかけてみる。

「おーい、マサ」

「ん?どうした?応援に来てくれたか?」

「いや、一応クラスの浜ちゃん応援するから。マサもついでに応援するけど」

「ついでかよー!まあいいけど。じゃあなんだ?」

「今健三さんから何話しかけられた?」

「……なんか「私のクラスが体育祭で勝たなければ娘が受験に失敗すると天啓を受けまして……」って相談された」

 何やってんだあの人!?

「その後「これで手を打ってください」って言ってこれを渡された」

 マサの手にあったのは……<ポケモン青(ローソン限定版)>。

「懐かしい!しかしそれでどうこうなると本気で思ってたのか健三さん!?」

「危うく買収されるところだったよ」

「されるなよ!?脆い!脆いぞマサ!」

「で、その後藤田先生が出てきて「何バカなことやってんですか!」って穏便に引き取ってもらってた」

「周りで見てたけどあれは穏便と言わないから!」

「トライアスロンに出場する選手は集まってください」

「集合来たな。じゃあやってくるわ」

「……そのポケモン青はどうするつもりだ?」

「そうだった。預かっといてくれ」

 そう言って義人に預け、去っていった。まあ、頑張れ。



 池山先輩一位、田村二位、マサ三位、松ちゃん四位、浜ちゃん五位、元部長六位。上位を水泳部が独占して、トライアスロンは終了。残念ながら藤田先生のクラスとの差は開いてしまった。

「全く、浜口は何をやってるんですか」

 足の速さ(長距離)ではマサの方が上だったし、仕方がないと思いますが。

「……中間テストの査定が厳しくなるでしょうね、可哀想に」

 健三さん!?職権濫用するな!?

「冗談です」

 ……わかりづらい冗談はやめてください。

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