第七話 細胞
現在、局地的に地球寒冷化現象進行中。
「昔、直君って呼んでたから。今日のクラス会議で承認もされたし」
「誰にですか」
「クラスみんなと直君に」
「私は承認してません!」
そりゃお前はうちのクラスじゃないし、関係ないな。
「ところで、あなたの名前は?」
「……話を逸らさないでください」
「名前くらい教えてもいいだろ」
「先輩は黙っていてください」
「ハイ」
イエスマンとは今の俺のようなものをいうのだろう。武部元幹事長のことを、俺はもう二度と笑えない。
「旦那弱い!一撃必殺効果絶大!」
「女子になにかトラウマでもあるんでしょうかー」
……あるよ。悪いか。
「古木です。今、中学三年の受験生です」
「へー、受験生かあ。私もつい最近編入試験受けたから、受験の辛さはよくわかるよ」
俺が二人に内心で突っ込んでいる間に、保護者の自己紹介が済んだようだ。
「それで、先輩とはどういったご関係で?」
「ただの幼なじみだって。ところでさあ」
一呼吸おいて、タツミが尋ねる。
「なおくんのこと、好きなの?」
「……な、何を言っているんですか!?」
「そうだぞ、保護者が俺のことを好きなわけがないだろう(失笑)。むしろ先輩なのに侮られてるくらいだからな。嫌われてぐぎゃあ!?」
「……先輩のそういうところは大嫌いです」
否定しないのなら、足の小指を思い切りよく踏みつけないでくれるかな!?小指の細胞、70%が死滅(残り30%の大半は痛みを感じる細胞。つまり痛みは最大級で持続中)したんじゃないか、これ!?涙が止まらない!!
「旦那は愉快だな」
「そうだねー」
そんなこと言ってる暇があるなら助けたまえ!!痛くて声すら出ない状態だから察しろ!!
「……ん?何か旦那がメッセージを送ってるぞ」
さすが義人!俺の危機を察してくれるのはお前だけだ!
「なになに?「ハンバーグの合挽きは7:3に限る」?俺もそう思うぞ」
そんなメッセージ送ってねえ!!俺は合挽きにそんな情熱を抱いてないから!!
っていうか小指やばいから!早く気づいて!お願いします神様仏様!!(涙目)
「……んー?三井がまたメッセージを送ってるみたいだねー」
さすが石井!お前の情報収集能力なら、これくらいわけないと信じてたよ!
「なになにー?「この前撮った健三さんの水着姿の写真(悩殺ポーズ入り)を分けてくれ」ー?いいよー」
そんなメッセージ送ってねえ!!そんな写真撮ってたの!?ちょっと見たい!小指が無事なまま、生きてこの場を切り抜けられたならだけど!!
「あはは……。古木さん、心配しなくても大丈夫だよ」
「……何がですか」
「私、今はなおくんにそういう感情を抱いてないから」
「……そうですか」
……おお、小指から重さが減った。助かったよタツミ、ありがとう。
「まあ、<昔>は別だし、<これから>どうなるかはわからないけどね」
「…………!!!」(ぐりっ)
ぎゃあああああああ!!!