表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/113

第七十六話 弾ける

 体育祭当日の朝。体と心の疲れは未だ回復していないというのに、長縄の練習をやるとのことで朝もはよから登校。例によって寝ていた義人をたたき起こし、時間どおりにグラウンドに集合(体操服には着替えた)したのだが……。

「……人口密度高いな……」

 どこのクラスも考えることは同じなのだろう。二つあるグラウンドは生徒達の練習風景で埋め尽くされていた。やる気に満ち溢れてるな……落ち着けよ。

「どのクラスも燃えてるな……お祭り騒ぎがそこまで好きか」

「そりゃ好きだろ。中でも二年の先輩方は盛り上がりが異常だ」

「理由は何かあるのか?」

「それはねー、二年が優勝の可能性が一番高いからだよー」

「三年じゃなくてか?」

「うんー。だって三年は部活引退してー、体力が落ちてるからねー」

「なるほど。それなら二年の先輩方のやる気にも頷けるな」

 ただ、三年の先輩もやる気がないわけではない。はっちゃけ具合ではトップだろう。そんなに受験勉強は大変なのだろうか……?背中に旗(〈三年四組ばんじゃーい〉と書いてある)を挿しながら、縄を回す姿はなかなかにシュールだ。

「……はっ!まさか笑わせて他のクラスの戦意を喪失させる作戦か!?なんて恐ろしい……注意が必要だな、旦那!?」

「いらねえよ!もしその作戦だったとしても、出オチじゃねえか!」

「こ……これは負けてられねえ……」

「清水!怪我人が何考えてんだ!?対抗しようとしなくていいから!そういう勝負は種目にないから!ちょっとどこ行くんだ!」

「開会式までには戻るから練習はお前らだけでやっとけ!」

 清水はそう言い残すと、松葉杖を突きながらも、かなりの速さで去っていった。……一体何に対抗意識を燃やしてんだ……あいつは……。

「……掛け声はあいつが出すって言ってたのにな……夏目?練習どうする?」

「やるだけやっとこう。清水がいなくてもできるってことを証明しとこう」

 そうは言ったものの、結局朝の練習では記録は伸びず。不安を残したまま本番に臨むこととなった。……まあ、いい記録が出なかったところでペナルティがあるわけではないし、いいんだが。



「ただいま!待たせたな!」

「清水、いまさら待ってねえよ。もうすぐ開会式だから並ぶぞ」

「何持ってんだ?競技に必要ないなら置いてこいよ」

「ふふ、これこそクラスの士気を盛り上げる秘密兵器だというのに……」

「はいはい、妄想も大概にしておけよ?」

「反応冷たっ!?」

「〈覇王 優勝は我が手にあり〉?ダサいな」

 例の三年の旗に触発されてだろう。清水が作ってきたのは旗だった。文化祭で余っていた段ボールで作ったようで、即席にしてはそこそこ良くできていた。……文章にセンスが見られないのは致命的欠陥だと思うが。

「そのくせネタばれして、挙句の果てに酷評だと!?」

「……そんなことに時間かけるなら、練習手伝えよ」

「声出しはやるって自分で言ってたのに……清水君って自分の発言に責任をもてすらしないんだね」

「このKYが」

「四面楚歌だ!この俺が、そんなに空気読めないと!?」

「いや、Kキモチワルイ Yヨソデヤレだ」

「ひどい!あまりにもひどすぎる!」

「ま、まあ清水君も悪気があってやったわけではないんだし……」

「石川さん結婚してください」

「いくら清水君が駄目人間でも、正直に言うのはよくないと思うよ?」

「やっぱり敵だらけだ!」

 ……今になって気付くとは、哀れなやつ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ