第七十四話 リーダーシップ
「長縄……それはクラスとクラスが全身全霊の力を籠め闘う、いわば体育祭一クラスが団結できる競技である。この種目を疎かにしての上位入賞など有り得ず、団結力と勝利への意志を問われる、血沸き肉踊る決戦である」
「……よくもまあそこまで捏造できたものだな……」
なぜ長縄如きに熱血要素を加えようとする。バトルとかいらないから。無事に一日が過ぎればそれでいいから。
「旦那、つまらんぞ?せっかくの行事なんだから、楽しめ」
「楽しもうなんて気力、昨日で尽きたわ」
「文化祭でか?」
「それもあるが、その後にあった謝罪巡りと実の姉による苛めが大きかったな」
「若いんだからー、精力でなんとかしなよー」
精力て。俺にどうしろってんだ。
「それはともかく、他の皆のテンションを下げるようなことはしないでくれよ?」
「……善処する」
自信はない。
「みんなー!?元気かー!?」
「「「オオーッ!!」」」
「……おおーう」
テンション高いぞ皆の集。俺は疲れに加えて寝不足だってのに、どうしてその高いテンションを維持できるんだ?話によれば、昨日クラスの一部の連中(音頭を取ってる夏目含む)は打ち上げに行った揚句に二次会に三次会をやり、数人に至っては徹夜らしいのに……体を労われよ。
「せーの!」
「「「いーち、にーの、さん!!」」」
心の中でクラスの若者たちに苦言をしていると、練習が始まった。
「「「いち……あ」」」
記録ゼロ回。当然といえば当然の結果だ。初めてやるわけだし。
「まあ最初だしな、ドンマイドンマイ。次いこう、せーの!」
……しかし何度やってもうまくいかない。飛べたと思っても数回、最高でも十回に届かないという駄目っぷりで、不安ばかりが募っていった。……クラスマッチの時は異常な好成績を残したのに……。意外とこのクラス、結束力はないのかもしれん。
「ふははははは、まるで駄目だな、お前ら!!」
「な、何者!?」
悪いイメージばかりが先行して、結果もそれ相応になるという悪循環に陥っていた俺たちのもとに、聞き覚えのある豪快な笑い声が聞こえてきた。
「あ……あなたは清水師範!?」
いつの間に昇進してたんだ清水!?
「やはり俺がいないと結束力が高まらないようだな!」
怪我のこともあり、縄を回すこともできない清水だったが、怪我を押して声出しをしてくれることになった。やはりこいつがいないとこのクラスはまとまらない……いい意味でも悪い意味でもムードメーカーだな。
「さあ俺を崇めろ!讃えろ!さすれば我が力、貴様らへと十二分に分け与えてやろう!!」
「「「調子に乗るな戦力外」」」
「……すいませんでした……」
ホントにいい意味でも悪い意味でも、我がクラスのムードメーカーである。