第六十九話 謝罪と召集
手土産に写真と義人謹製のお菓子(これもほとんど余った材料で作った)を持参し、片っぱしから住所を回ること数時間。「あなたは悪くありませんから」と優しい言葉をかけられることもあれば、「最低な気分です。済んだことだから我慢しますが、盗撮した奴の顔と名前教えてくれません?殴りに行くんで」などと物騒なことをおっしゃる御仁もおりました。しかしこれで最後のお方、これが済めばもう帰れるのです。あなたのおっしゃる場所に向かえるのです。だから今しばらくの辛抱を……
「五月蠅い。早くしろ。五分以内に帰って来なかったら捻じ切る」
「……勘弁してください姉上様」
どこを!?などというツッコミは命を削る事態を引き起こしかねないため、してはならない。やるとなったら本気でやるのが姉ちゃんの怖いところだ。
せっかく幼なじみ(うちの姉ちゃんとタツミの姉さんも幼なじみ、当然その妹のタツミも姉ちゃんの幼なじみ)が再開、集合したということで、四人一緒に飯を食いに行こう――――と急に告げられた(ちなみに料金は割り勘らしい。あのケチめ……背は低くても年上なんだからここは奢るくらいの器量の大きさは見せろよ……)。もちろん俺には相談もなければ拒否権もない。ところが仕事が残ってる……という命に関わる最大の危機になったのだが、謝罪を終わらせるのは最低限の義務。悲劇を考えないように先延ばしにしてここまで来たが、今はもう恐怖から逃れることもできません。嫌な予感ばかりが胸をよぎる。指……?それとも足……?嫌だ!まだ五体満足な姿でいたい!なにか打開策はないものか……?
「……着いた」
重要な案件を一心不乱に考えているうちに、目的地に着いてしまった。とりあえず謝罪を済ませよう。恐怖に怯えるのは後回しにして……ぴんぽーん。
「どちら様ですか?」
「北高の者です。じつは赫々云々で」
「それはひどいですね」
「これはお詫びと謝罪を兼ねてで……」
「それはどうもすみません」
……何の問題もなく終わってしまった。できればここでアクシデント(主に叱咤など)が起きて時間を潰せれば……などと考えていたのだが、そう都合よくは進まないらしい。
「ん?携帯にメールが……」
発信者姉ちゃん。件名〈コロス〉。
「罰則がきつくなってる!?俺死ぬのか!?」
全力で自転車をこぎつつ、目的地(居酒屋)へと向かうのだった。
……どうか五体満足で体育祭に出られますように。