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第六話 遭遇

「ここが水泳部の部室?」

「ああ。更衣室とかシャワーは中にある」

「もちろん二十五メートルプールだよー」

「部員は何人くらいいるの?」

「今は十二人だったかな。内、一年は八人だ」

「女子の人数は?」

「先輩に一人と一年に一人の二人。二人とも地区では入賞レベルで、石川さんが入れば三人になるよ」

「へー。少数精鋭なんだね」

「やっぱりー、女子だと高校になってまで水着姿になるのは恥ずかしいみたいだねー」

「それだけじゃないんだけどね、女子は」

「何が?」

「ううん、何でもない」

 話を打ち切ってタツミが部室の扉を開けようとするが、制止する。

「一つ忠告を忘れていた」

「何?」

「……顧問の先生が怖いから、心しておくように」

「怖い?暴力をふるうとか?」

「いや、そんなことはないが……とにかく怖いから気をつけろ」

「…………?まあいいや」

 よくわかっていない表情で、再び扉を開けるタツミ。まあ会えばわかるだろう。一応忠告はしたし。

「失礼しまーす」

 練習はすでに始まっており、選手は泳ぎ、顧問おぐらさんとその他一名はプールサイドで指示を出していた。

 …………。

「あっ先輩!!遅かったですね!!」

「……なぜ夏休みが終わったにもかかわらず貴様がいるんだ……」

 その他一名こと保護者(今年受験生の後輩。夏休みには見学がてら、水泳部のマネージャーの仕事をしてくれている)が寄ってきた。小倉さんは浜ちゃん(すでにグロッキー状態)の指導でこちらに気づいていないようだ。

「まだ中学校は夏休みですよ。八月二十五日こんなひに始業式なのはこの学校くらいじゃないですか?」

「おう、そうだった」

 まだ八月だったのをすっかり忘れていた。始業式早すぎだろ。決定した校長なんて水虫になればいいのに。

「そんなことより……」

「ん?どうした?」

「誰ですかその女」

 ……途端に保護者の声のトーンが下がり、周辺の空気が急速に冷える。な、何なんだこの空気は?八月だというのに冷汗が出始めた……?

「て、転校生だ」

 なんでどもってるんだ、俺。先輩の威厳を見せつけないといかん。

「そんなことどうしてお前に関係が」

「いいから答えてください」

「……ハイ」

「おおっと旦那、保護者ちゃんに押し切られたーっ!!」

「ええー、ここは女子には弱い三井の特徴がよく出てますねー」

 うるさいよそこ二人。何実況してんだお前ら。

「で、先輩。どなたですって?」

「転校生のタツミだ」

「旦那が心の中でツッコミを入れたことで、平静さを取り戻したようですね」

「やはりー、天性の突っ込み気質と言ったところでしょうかー」

 うっさいお前ら。さっさと着替えて泳げ。

「フルネームは?」

「石川辰美だ」

「……どうしてあったばかりの転校生を名前で呼んでるんですか……?」

 保護者、怖いよ。小倉さん(ヤクザ顔で筋骨隆々)並みのプレッシャーだよ。

「……いや、タツミとは幼なじみで」

「始めまして。私、なおくんの幼なじみで石川辰美といいます」

 ナイスカットインだ、タツミ。あと少しで立ってすらいられなくなるところだった。わが後輩ながら恐ろしい女よ。

「……なおくん……?馴れ馴れしい……」

 また冷気が!?

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