第六十六話 束縛
「ごちそうさま。この写真、記念にずっと取って置きますね!」
「「「ありがとうございました!!」」」
最後の客が執事喫茶を後にしたとき、一斉に歓声が上がった。
「終わった――!!」
「これは大成功と言ってもいいんじゃね!?」
「間違いなくそうだろ!余る予定(クラスで分担して持ち帰る予定だった)で仕入れた材料、ほとんど底をついてるぞ!」
「こんなに繁盛するとは……俺のおかげだな!」
「清水、お前も確かによく頑張ったが、一人だけの力ではない。皆の力が合わさったからこそこの文化祭は成功したのだ!」
「おお、夏目が尋常でなくいいこと言ったぞ!」
「しかしその通りだ!俺たちは最高だ!ノーベル賞ものだ!」
ハイテンションすぎてわけわからんことを口走ってるぞ。ノーベル賞て。何か該当するものがあるのか?平和に貢献したとはとても思えんが。
「それにしても悪かったねー。中学生に手伝わせちゃうなんて」
「三井君の後輩なんだって?いい子だねー」
手伝ってもらったこともあり、保護者にはクラスに残ってもらっていた。少しばかり残った材料で賄いを作り、閉幕式が始まるまで早目の打ち上げをするのでそこで労おうという寸法だ。
「そんなことないですよ。好きでやったことですし。それに」
謙遜なんか柄じゃなかろうに。年上の女子相手では勝手が違うのか?
「……私は先輩に体も心も束縛されていて、拒否権がないんです」
何言っちゃってんのこの後輩!?
「ありもしないことを口走るな!?こら清水!怪我人が殺気を放つな振りかぶるな「……相討ちでもこいつを倒す……」とか言うな!ほれ見ろ怪我が悪化して苦しんでるじゃねえか!」
立ち上がって足に体重を乗せた結果、痛みが走って顔が青ざめていく清水。変なところで熱血するな。
「すいません、半分は冗談です」
「半分!?」
全部の間違いだろうが!
「束縛されているのは肉体のみです」
「だから根も葉もない嘘をばらまくな貴様!俺のこのクラスでの立場をどうするつもりだ!?」
四方八方から軽蔑の視線が突き刺さる。俺が一体何をした!?そして清水、もう動くのは諦めろ。悪化するばかりなのは自明だから。それと女子!「……やっぱり……」ってどういうことだ!?俺は今までどんな風に女子に思われてたんだ!?
「まあそれも冗談です」
今の嘘で得することはあったのか。俺の評判が下がったことしか利害はないと思うんだが……そこまでして俺の評判を下げたいか。
「……半分、というのは事実なんですけどね……」
「まだ何か俺を貶めるつもりか!?」
「それにも飽きたので、せっかくですからプチ打ち上げを楽しみましょう」
流行り廃りがあるのか、俺苛めには。
「一発芸誰か見せろー!」
「よし俺が!円周率を際限なく言うぜ!」
「すごいけど無駄だ!盛り下がるから止めい!」