第五十話 シフト
「ひやっほーい!」
「看板製作しゅーりょー!」
「自分で自分を褒めてあげたい!いやいっそみんな俺を褒めてくれ!!」
「お前はよくやったよ!そして俺も!」
「大道具係、ヘルプの執事係ばんじゃーい!!」
「「「ばんじゃーい!!!」」」
俺たちのテンションは最高潮。その理由は長きにわたった看板制作の完成だけにはあらず。
「朝日が昇ってきたZE!」
「きれいな朝日だ!そしてこれから看板を運ぶと考えると鬱になって死にたくなるな!」
文化祭本番前日の朝。ここまで俺たちは一睡もせずに看板制作を続けていたのである。つまりは徹夜。地主の息子である義人のおかげで制作場所(余ってた空地)を確保できたため、ギリギリで間に合った。明かりが足らず色塗りに失敗したり、塗料に使ったシンナーの臭いで通報されたりとさんざんだったが、夜中にも関わらずどこからか見守っていた健三さんのフォローで事なきを得たりした。この出来事で健三さんの評価はウナギ登り、俺たちのやる気は急上昇。そうして急ピッチで進められた制作は日の出とともに終わりを告げたのだった。今日は授業はなく、丸一日準備に使えるため、このまま飾り付けに移る。この場所は少しばかり北高から離れているため運ばなくてはならないのが厄介だが、この場所がなければ完成すら不可能だったに違いない。グッジョブ義人、そしてみんな。
「凱旋帰校じゃー!熟睡してる健三さんを胴上げしながら帰るぞー!」
「いっそ看板の上に乗せて王の帰還みたくしようぜ!」
「いいなそれ!乗せろやあ!!」
気分が高揚しすぎていたせいだろう。せっかく完成した看板が壊れることも心配せず、寝たままの健三さんを担ぎあげた。……まあ、一度圧し折れた後にかなり補強したので大丈夫だろう、たぶん。
「……旦那、終わったか……」
「義人、お前も死にそうだな……」
看板を校内に運び入れると同時に倒れ込むようにして眠りだした制作班の面々(健三さんは途中で起きて「気分はいいですが高いとこ嫌いです。降ろしてください」と言って降り、登校途中の生徒から自転車を強奪、登校。せっかく上がった評価が暴落した)。俺も寝たいが、一応トップのためそれすらも許されない。義人、石井、清水も同様だ。
「さてー、明日の予定だけどー、この時間が仕事になるからー」
「おお、忙しい俺たちのかわりにシフトを作ってくれたのか。助かる」
「それで眠くって……俺眠くて倒れそうだ」
「感謝する。お前たちを見なおした」
なんて友達思いな奴らだ。何の旨みもないのに、自主的に仕事を片付けてくれるなんて……。これで残る仕事は飾り付けのみ。
「気を緩めたら眠りそうだから、俺は早めに仕事に取り掛かる。あとは任せろ」
二人に助けられてばかりでは目覚めが悪い。俺の全精力を注いでやる!
「罪悪感が生まれたよー」
「そうだな……」
二人でまた何か話しているが、構うまい。俺が指揮をとり、徹夜していないメンバーで仕事を終わらせてやる……!