第四話 関係
「では質問を続けます」
「……勝手にしてくれ」
どうせ止めても無駄なら早く終わらせよう。いつ終わるか見当もつかんけど。
「質問のある人、挙手!」
「「「はい!」」」
……多いなー。そのやる気を授業の時にでもまわしたらー?
「では、加藤さん」
「二人の関係は、ただの幼なじみなの?」
「ただの幼なじみ。もしくはそれ以下。俺が引っ越しして以来、会ってなかったし」
年賀状を数年ほど出して、それ以来は手紙での交流も無くなったからな。
「次、伊藤さん」
「石川さんはどうしてすぐに、このクラスに三井君がいるってわかったの?」
「この高校になおくんがいるってことは知ってたから。同じクラスになったのは偶然だけど」
「それならどうして同じ高校に転校してきたの?」
「まず、うちと直君のお父さんの会社が同じでね、そのお父さんが同じ工場に転勤になったの。それでこの高校が、豊橋で一番の進学校だから編入試験受けたら受かったってわけ。親同士の交流はあったから、それでなおくんもこの高校だって知ったわけ」
「つまり全くの偶然だな」
「僕としてはー、三井にはなぜ知らされてなかったかの方が気になるなー」
「もう交流してないから、親が知らせる必要がないと判断したんだろ」
最近母さんが妙に嬉しそうにしてたのはこれか。納得。まあ本来、知らされる必要もなかったしな。奴があんな自己紹介しなかったなら。
「どうしたの、なおくん」
「……今更ながら、お前がすべての元凶だと理解したよ」
「…………?」
「次の質問は?……兼子」
「石川さん、恋愛経験は?」
「男子と付き合ったりしたことはないかな」
「次、岡田さん」
「部活は何やってた?それでどこに入るつもり?」
「水泳部だったし、ここでも水泳部があれば入ろうと思うんだけど……もしかしてプールない?」
「いや、あるぞ。校舎から歩いて五分から十分のところに」
「それは遠いね……」
「ちなみにー、このクラスには四人水泳部がいるよー」
「そうなの?」
「うんー、県大会入賞の浜ちゃんにー、そこの杉田と僕ー、それと三井も水泳部だよー」
「そうなの!?」
「……ああ」
「なら入る!」
知り合いがいるなら入るのか。現金なもんだ。別にいいけど。
「他に質問は?」
「三井君は彼女いるんですか?」
転校生と関係ねえ!
「いないよー」
「石井!勝手に答えんでいい!」
いないけど!
「そうなの!?なおくんにはてっきりもういるかと……」
「悪いか!?どうせ俺なんて十六年生きてきて彼女いねえよ!」
なんで転校生の質問会で、こんな泣きそうになってるんだろうか、俺。
「三井君って杉田君と石井君との三角関係なんですよね?」
「なぜそんな展開に!?」
「そうなの!?」
「タツミも信じるな!そんなわけないだろうが!」
「三井君が攻めと見せかけて受けなんですよね!?」
「話を聞け腐女子!義人と石井も言ってやれ!」
こういうのは本人たちで否定するのが一番だ!義人、石井、さあ大きな声で!
「……黙秘します」
「……僕からは何も言えなくてー」
「なぜ!?黙秘する意味がわからない!否定しろよ!?貴様らやっぱり俺の敵だ!畜生!」
「直君がそんな道に走ってたなんて……」
「俺の言葉に説得力というものはないのか!?」
喧噪の中、質問会は終了したのだった。そしてこれを機に、俺の変な評判も広がることに……。
登校拒否したい。