第四十七話 反抗期
ここは山本家。せっかくの休日、三井のクラスの担任である山本健三は特にすることもなくだらだらと過ごしていた。
「父さん。休日くらいどこか出かけたらどうですか」
「せっかくの休みだからこそ疲れを癒すのでしょう」
「常日頃から疲れる行動も取ってないのに何を言ってるんですか」
やれやれ。娘が反抗期のようです。口の悪い性格は誰から遺伝したんでしょうか。つい先日まではおしめも代え粉ミルクも作ってあげていたというのに、時が経つのは早いものです。
「まあ早い話、勉強の邪魔なので出ていってください」
反抗期です。親の威厳はどこへ行ったのでしょう。
「自分で言うのもなんですが、静かにしてますよ?なんならテレビも消しますし」
何が悲しくて二日連続で外へ出なければいけないんでしょうか。私の家なのに。
「大してお酒に強くないのにちびちびと高い酒を飲まれていては気が散ります。いつの間にか寝てる時もありますし」
「自分の部屋で勉強すればいいじゃないですか」
「自分の部屋だと集中できないんです」
困った娘です。しかし受験生相手に向きになっても仕方ありません。大人の対応をしましょう。
「では書斎でぐっすり眠ることにしましょう」
目的もなく外に出ることほど、時間の無駄もありません。
「親が駄目だと反面教師となっていいですよね」
嫌みを言われたようですが気にしないようにしましょう。別に構いませんし。
「ところであなたはどこの高校を受験するつもりですか?」
「北高ですが」
「よりによってうちの高校ですか。何故に?」
「市内一の進学校ですから」
そういえばそうでしたね。我が娘は勉強はそこそこできるのでした。
「将来を考えるなら私立でも構いませんよ?」
「勉強するのにわざわざ高いお金を払う必要もないでしょう」
いい心がけです。
「ただでさえうちは無駄に高いお酒を好んで買う、浪費癖のある大黒柱がいますから」
早く反抗期が終わってほしいものです。一々親に突っかかってこなくてもよさそうなものですが。
「ところで、文化祭には見学に来るのですか?」
一応聞いておきましょう。
「行きます。校内の見学にもなりますし、来年からは私も参加することになるでしょうから」
自信過剰ですね。ないよりあった方がいいですが、程度をわきまえるべきでしょう。
「父さんのクラスは何をやるんですか?」
「執事喫茶だそうです」
我がクラスながら意味がわかりませんね。そレがまたいいのですが。
「気が向いたら行きます」
「そうですか」
無理に勧誘する必要もありませんし。自主性を尊重しましょう。
「では、本格的に勉強を始めるので出ていってください」
「大変ですね。そんなあなたにこれを進呈しましょう」
親からの気持ちのこもったプレゼントです。
「元気ハツラツですか?」
「わざわざリポビ○ンDをありがとうございます」
礼には及びませんよ。さあ、飽きるまで寝るとしましょうか。