第四十三話 希望
「ごめん、待った?」
「ううんー、私も今来たところー」
「……人を待たせておいて、コントをするとはどういう了見ですか、杉田先輩」
「ここはお約束だろ。保護者はどうしてカリカリしてんだ?」
「それはもうー、三井が女子と二人きりで遊びに行くからだろうねー。ビバ青春ー」
「なるほど。嫉妬か」
「なんとでも言えばいいです。あとビバってなんですか。いつの時代の産物?久しぶりに聞いて混乱しましたよ」
「石井、ところでお前はどれくらい前に来た?」
「僕は集合時刻十分前くらいかなー。その時に古木さんはもういたけどー」
「……張り切りすぎだろ」
「集合時刻の十五分後に来た杉田先輩はふざけ過ぎです」
「ちなみにどれくらい前にきた?」
「一時間前です」
「……受験生がそれでいいのか?」
「勉強よりも大切なことがあるんです」
「その心はー?」
「人生に関わってくるかもしれないことです」
「おお、燃えているな」
「惜しむらくはー、その熱意に三井が気付いてないってことだねー」
「……先輩は、本当に私の気持ちに気づいてないんですか?」
「ほぼ百パーセント気づいてないだろうな」
「それが三井だよー」
「はあ……どうすれば気づいてもらえるんでしょうか?」
「知らんよ。それに知ってたとしても、俺としてはこのまま三角関係に移行するのが一番面白い展開だから、何も言わん」
「最低ですね。可愛い後輩のために何かしようとは思わないんですか?」
「何が旦那にとって一番幸せかわからん今、俺にしてやることは何もない」
「僕はー、みんなが幸せになるように動くつもりだよー。だから今は何もしないで傍観ー」
「……いいこと言ってるんだかいないんだか……要は自分の気分しだいで行動するんですよね」
「その通り」
「そうだよー」
「……わかりました。お二人の先輩には手を貸してもらいません。自分の手で先輩の心を振り向かせてみせます!」
「おおー」
「いい覚悟だ」
「さあ、その野望のために今日はしっかり観察してやります」
「おもしろい展開になるといいな」
「そうだねー」
「少なくとも、私とお二人では価値基準が天と地ほど違うので、そのおもしろい展開とやらにならないことを望みます」
「そんなー。僕たちはただー、純粋に三井と石川さんの距離が縮まらないかなーって言ってるだけなのにー。あわよくば第二のステップへとー」
「どこが純粋なんですか!あと第二のステップって!?」
「にゃんにゃんするステップだな」
「いつの時代の人間ですか!あとステップが進み過ぎです!」
「意味知ってるじゃん」