第三十九話 具体策
「プレオープンで気が付いたことを挙げていってー」
「さあどんどん挙げていってくれ」
前後半のプレオープンも終わり、俺たちは反省会(司会は義人、石井のコンビ)を行っていた。
「そうだな……注文を取りに来るのが遅い」
「執事係ファイト」
「それで終わりかよ!解決策を出し合うのが目的だろうが!執事係に負担を押し付けるな!」
「そうだよー。もっと具体策を立てないとー」
「そうだよな!確かに執事係の不慣れもあるが、カバーできる点があるはずだ!」
「執事係が二倍速で動くってことでおっけーだよねー」
「全く具体策じゃない!」
「なんかそういうアイテムありそうだな」
「ねえよ!現実世界には、そう都合のいいアイテムねえよ!」
「ある薬を使えば数十倍になるが……」
「マジで!?」
「パフェの甘さが」
「必要ない!今の話の流れからわかるだろうが!」
「ちなみにその薬品は戦後砂糖の代わりに使われていて、入れすぎると味覚が馬鹿になるほどだったそうだ」
「怖いよ!戦後でないと許されないような薬品だなおい!そしてなぜその薬品の話を今ここでする!?」
「あまり夢ばかり見ているようならお灸を据えようかと」
「リスクが高すぎる!」
「まあ、客の出入りをチェックする係も必要だな。シフトがきつくなりそうだが致し方あるまい」
「健三さんが手伝ってくれれば楽になるんですけど……」
「手伝うわけがないだろう、あの健三さんだぞ」
その健三さんは、教室の隅で居眠りをこいている。
「……頼んだところで使えそうにないような……」
「係を増員するってことでいいな」
皆異議はないようだ。……あの健三さんの姿を見れば頷くしかないが。
「他に意見は?」
「執事の衣装がバラバラなのも気になるな」
スーツは各自で持ってきているため、色からメーカーまで揃っているものが一つとしてない。確かにこれは客から見たら不自然かもしれん。
「どうすればいいと思うー?」
「別に気にしなくてもいいだろ」
「いや、せっかくやるんだから、少しくらい統一感を持たせたい」
「方法はないものか……」
「なんか一つくらい費用から金出して買おうぜ」
「何を」
「執事に必要なもの……」
「蝶ネクタイはどう?」
「それだ!」
「よし、それでいいか?」
異議なし、と声を揃えるクラスメイト達。団結感があるのはいいことだ。
「それじゃ、誰か買い出しに行ってくれる人はいるか?明日にでも」
「めんどいな」
「今日わざわざ出てきてんだから、明日くらい休ませてよ」
「慈善事業じゃあるまいし」
うん、こっちのやる気のなさでも一致団結してるな。団結感があるというのも困りものだ。
「それならー、執事係から代表者二人出してー」
「どうして執事係?」
「一番お客さんの目につくからねー」
それもそうか。しかし……。
「それなら代表者は男女二人で」
「男子の買い出しはは俺がやる!!」
「清水、お前は大道具係だ。お呼びでない」
男女二人のところに反応するなよ。切なくなるだろ。
「男子は三井でいいねー」
「なぜに!?」
面倒臭っ!
「旦那、執事係代表だろ」
強制で決められた代表だというのに理不尽なことだ。
「それじゃあー、女子は誰か立候補いるー?」
「石井くーん、辰美ちゃんがやりたいそうでーす」
「そ、そんなこと言ってないって!」
「えー?三井君が決まってからそわそわしてたじゃん?」
「それでは石川さんで決定でいいかね、諸君?」
なんだ義人、偉そうに。それでもクラスのほとんどが賛成したので(清水は断固反対の様子、タツミは俯いたまま何も言わず)良しとしよう。
「なんか悪いな、タツミ」
「別になおくんは悪くないよ」
そうだな。悪ノリした連中がいかんのだ。
「そんなに人に面倒を押し付けるのが楽しいかね」
性格がねじ曲がってるな。人のこと言えんけど。
「……そういう解釈だったのね……」
なぜ呆れる。