第三話 質問会
俺と幼なじみの転校生、石川辰美は並んで椅子に座らされていた。
……少しばかり詳しく言うと、俺に関しては後ろ手に椅子に括り付けられていた。何これ?今から俺は死刑執行でもされるのですか?清水の様子を見るとあながち冗談でもなさそうだから困る。
「るーるる、るるる、るーるる、るるるるるるるるーるーるー」
「では公開合同質問会を始めます」
「なぜに公開合同質問会のバックミュージックが<徹子の部屋>!?」
「……ははは、変わった高校だね……」
「変わってるとかいうレベルじゃない!まず俺を縛っているこの紐をほどけ!」
「被告人、三井は黙りなさい」
「やっぱり俺は被告人なのか!?そんな扱いなのか!?弁護士を呼んでくれ!」
「僕が弁護士代りになってあげるよー」
「石井、お前……さすがは俺の親友の一人なだけあるよ……」
「じゃあ聞くけどー、石川さんと一緒に寝たっていう情報があるんだけどー、事実だよねー?」
「訂正だ!お前なんて仲間じゃない!」
どこからその情報を手に入れた!?火に油を注ぐな!四面楚歌にもほどがある!クラスの男子が殺気立つから!清水なんてあれ、殺し屋の目つきだろ!?嫉妬で人を殺せるレベルだよあれは!
「石川さん、答えてください」
「事実だよ?」
「三井、死ね」
「司会(夏目。このクラスのホームルーム会長を務める。健三さんに仕事を押し付けられたせいで仕事の処理能力等が格段に上昇した苦労人。最近彼女に振られ、今は独り者らしい)!感情的になるな!そんな会じゃないだろ質問会は!?」
「でも事実だよね、なおくん?」
「なおくんって何だ?旦那?」
「義人、ニヤニヤしながら聞くんじゃねえ!それと石川さん、なおくん言うな!恥ずかしいから!」
「昔はそう呼んでたじゃん」
「昔は昔!一緒に寝たのも、幼稚園児のお泊り会みたいなもんだから!」
「えー、お互いの家で二人きりでも……」
「黙らっしゃい!あと石井!覚えてろよ!?」
「えー、事実だったじゃんー」
「言い方ってものがあるだろう!?」
「えー、では別の質問に移ります」
「もう終わりにしない?」
「はい、深谷君」
「俺の意見は無視ですか!?」
あの司会、都合の悪いことはとことん却下するらしい。
「三井は石川さんのことをなんて呼んでたんだ?」
「ノーコメント」
「タツミちゃん、かな」
「言わなくていいから!?」
なんて恥ずかしい。おのれ、過去の俺は何をやっていたんだ。石川さんって呼んどけよ。馬鹿野郎、過去の俺。
「それではこれから、二人はお互いに<なおくん>、<タツミちゃん>と呼ぶように」
「横暴だ!!」
なぜ司会にそんな権限が!?
「いいよ。そっちの方が呼び慣れてたし」
「ではよろしいですね」
「よろしくないよ!俺の話聞いてた!?」
「……私もその方がいいな」
「よろしいですね」
「……せめてタツミで勘弁してください」
「よろしい」
怖えよ、夏目。女子に甘いよ。そして人の不幸を玩び過ぎだよ。