第三十八話 立場
……しまった。タツミに呼ばれているというから、てっきり一人で座っていると思ったのだが、予想に反して三人で座っていた。一緒にいるのは副会長と書記の人(名前は忘れた)だと思う。転校して二週間も経ってないのに、仲良くなったようで宜しいことだ。その社交性は見習いたい。
「お呼びでしょうか、お嬢様?」
まずは用件を聞こう。話はそれからだ。そう思って、できる限りにこやかに用件を尋ねてみた。……気持ち悪いとか言われたらどうしようか。
「なおくんが笑うなんて珍しいね」
そこに食いつく前に用件を言ってくれ。恥ずかしいから。
「うんうん、三井君はいつも笑ってた方がいいよ。杉田君と石井君みたいに」
四六時中頭の中が花畑になってる奴らと一緒にするな。あいつらは気苦労をしない体質なんだ。もしくは
「身だしなみも常に整えるようにしようよ。佐伯さんが原石とか言ってたのも、今なら納得できるし」
あなたは一学期の間、俺のことをなんだと思ってたんですか。
「佐伯さんも見る目ないなーと」
失礼なこと言ってるって自覚してますか?
「で、用件だけど……」
ようやく本題に入るのか。
「二人が聞きたいことがあるんだって」
この二人が?接点なんてほぼないに等しいのに。
「朋ちゃん、聞きたいことがあるんでしょ?」
書記の人は朋がつく名前のようだ。どうでもいいけど。
「うん」
「なんですか?」
「三井君って彼女いないんだよね?」
「生まれてこの方、一度もできたことはありませんが何か?」
今の立場(仕える側と奉仕される側)を利用したいじめが発生してます。
「じゃあ辰美ちゃんのことどう思ってる?」
「ちょっと、朋ちゃん!?」
はい?
「質問の意図がわかりかねるんですけど」
「だから、辰美ちゃんのこと好き?」
「んー!んー!」
タツミが何か叫ぼうとするが、口を塞がれている。……ほんとに仲が良いのかわからんな。
「……まあ、嫌いではないのは確かです」
「…………」
「じゃあ好きなんだね?」
なぜそう短絡的になるんですか。
「……そんなこと言えません」
「なら女性の中で何番目の存在?」
「は?」
「ああ、名前は言わなくていいよ」
そういうこと言ってるんじゃないんですけど。
「三、二、一、はい!」
「……五番以内?」
「だってさ!」
「…………」
もう口は塞がれてないのに、タツミがさっきから黙ったままだ。
「どうかなさいましたか、お嬢様?」
「……なんでもない」
「それでは御注文を伺ってもよろしいですか?」
「……紅茶で」
「お二方は?」
「私たちはコーヒーで」
「かしこまりました」
さて、バックに伝えるか。
「ああそうそう」
「なんでしょうか?」
「紅茶には愛情をたっぷり入れてあげて!」
「そのようなサービスは行っておりません」
スマイル0円とかじゃないんだから。