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第三十五話 思い違い

「準備も着々と進んでいますね、感心感心」

 健三さん、せっかくスーツ姿になって常識人に見えるんですから、おかしな行動は取らないでください。いい大人が文化祭の出し物の試作品をつまみ食いするってどういうことですか。

「三井、食べ物は食べるためにあるんです」

 それに限っていえば、作った人、もしくは来店するのに近い人物が食べることに意義があると思います。さっきから食べても感想一つ漏らさないんじゃいい迷惑です。

「でもさー三井ー」

「ん?」

「この中だとー、健三さんが一番執事っぽく見えるよねー」

 見た目だけはな。やはり年をそれなりに取ってるだけあって、貫禄というものがある。全員(係問わず)スーツとネクタイを着用することになったのだが、義人は身長の低さがネックになっているし、石井は未だにワカメヘアーのまま(気に入ったらしい)で論外、清水は体格の良さが災いして、カジノにいる用心棒に見える。他の連中も高校生であるが故に、スーツに着られている感が拭えない。やはり、執事喫茶は無理があったのではなかろうか。

「でも、なおくんはまともに見えるよ?」

「見えるだけじゃなくて実際まともだからな」

「はいはい」

「義人、軽くいなすな」

 失礼な奴だ。

「しかし……」

「どうしたの?」

「タツミは違和感があるな」

「スーツ姿だからじゃなくて?」

「それもあるが、それ以外にもなんか変なんだよ」

 男性用のスーツを着ているのに変に見える理由……ああ。

「胸か」

「……なおくんのエッチ」

「違和感の原因を探し出しただけだ。やましいことはない」

「…………」

 なんだろう。タツミの視線が冷たい。



「三井ってそのことに今さら気付いたのか?」

「俺たちは一番に目がいったのに……」

「杉田、三井って去勢手術でもうけたのか?」

「いや、旦那が女子に関心がないのは、主にトラウマのせいであって、肉体的なもののせいではない」

「トラウマ?」

「逢ってきた女性のほとんどからひどい目を受けてきたらしい。旦那の話によると」

「例えば?」

「実の姉によるスキンシップの名を借りたDV」

「…………」

「幼なじみによる毒殺未遂」

「…………」

「後輩による罵倒」

「……もういい、やめてくれ」

「でも、三井が嫌われてるわけではないんだよな?」

「むしろ逆。愛情の裏返し?」

「疑問形なのが気になるな」

「俺女子じゃないし」

「それもそうか」

「「「はっはっは」」」



 ……どうしてだろう。タツミからは軽蔑されてる気がするし、あそこで笑ってる男子連中からは馬鹿にされている気がする。

「なあタツミ、どうしたんだよ」

「……別に」

「何かまずいことでもしたか?したなら謝るが」

「……少し不快にはなった」

「すまん」

「……そう思うなら行動で示して」

「……なにか奢るか?」

「奢らなくてもいい。ただ……」

「ただ?」

「この執事喫茶のプレオープンのとき、なおくんがエスコートしてくれる?」

「……そんなことでいいのか?」

 プレオープンとは、文化祭の前に一度実際に執事喫茶を開いてみる実験のことである。クラスで半分ずつ分かれて、提供する側とされる側でどのような問題が浮かんでくるかを試すために行われる。その中でのエスコートだ。普通にサービスすればいいんだろ?それくらいならお安い御用だ。

「約束だよ?」

「男子相手にやるよりかマシだ。喜んでやってやる」

「……なおくんでもそんな風に思うんだよね?」

 失敬な。俺を同姓愛好者だとでも思ってるのか。

「だってなおくん、女子に冷たくない?」

「女子が俺を嫌ってるんだろ」

 逆だ、逆。



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