第三十一話 カット
「では最初のお便りです!」
「それなんてラジオ番組!?」
「司会進行はこの私、DJ夏目がお送りします!」
「お前絶対俺を憂さ晴らしの標的にしてるだろ!?」
「うん」
「清々しい!堂々と答えるその姿は清々しいが、清々しければ許される問題じゃないからな!?」
「このお便りの要望は「テーマは<わかめ>でよろしく!」だそうです」
「無視しやがった!都合の悪いことを無視するのは、健三さんの異様な空気がこのクラスに蔓延しているからか!?わかめって!海藻かよ!俺の髪をなんだと思ってるんだ!執事と関係ないだろ!かすりもしてねえ!」
「懺悔は終わりでよろしいですか」
「俺の会心の突っ込みが懺悔扱い!?」
「さあ、いくがいいマイスター佐伯」
「素人なのにマイスター!?」
ちなみにマイスターとは名人という意味だ。豆知識。
「ギギギ……カミ……キル……」
「ええ!?急に何!?今までそんな喋り方してなかっただろ佐伯さん!?何が起きた!?」
「いや、キャラが薄いと思って」
「もう濃い人はいらないよ!変人のバーゲンセールだからなこの学校は!」
「三井のことか―――――っ!!」
「俺じゃねえよ!」
「ではカットを始めます」
「もう始めるのか!?ちょっと待て!まだ心の準備が……」
「基となるのは石井でいこう!」
「ちょっと待って―。一言だけ言わせてもらうからー」
何を言うつもりだ。
「アッ―――!」
わかる人だけ分かればよし。
「完成しました」
「……まさかテーマの<わかめ>が磯野家のワカメだとは思いもしなかったよ」
そのため、今の石井はオカッパ状態。髪をほとんど切っていないのでよかった。気持ち悪いくらい、髪がさらさらなのが気になってしょうがない。恐ろしい薬物とか使ってないよな?あともう一度言うが、絶対執事と関係ない。
「次のお便りだYO!」
「……ノリノリだな夏目。今のお前を録画して冷静なときに見せてやりたい」
「テーマは<テライケメンwww>をご希望!さあ、ミニスター佐伯、ファイト!」
「佐伯さん出世した!?」
ミニスターは首相の意。テストに出るから覚えとくと吉。
「てかこの書き込みしたの誰だ!2ちゃんねらーが混じってるぞ!怒らないから2ちゃんねらーは挙手しなさい」
「「「はい」」」
「多っ!!」
予想を上回る駄目っぷりだ。かく言う俺も楽天の掲示板をのぞいているから、人のことは言えないが。
「では今回は杉田を素材とする!」
「カッティングスタート!」
「……正直見くびってた。ごめんなさい」
「杉田……なぜいつも前髪を垂らしたままにしてたんだ……?」
「もったいねえ……てか殺意すら覚えてきた……」
義人は見事、二枚目へと変貌を遂げていた。男子は妬み、女子は呆気に取られて言葉が出てこないようだ。このまま自然解散にならんかな。
「……腹立ってきたから三井のテーマを面白いのにしよう……」
事態悪化。義人のアホ。
「冤罪じゃね」
「冤罪なんて警察ではよくあることだろ」
「旦那、問題発言するな」
感想が欲しいです。できれば下さい。