第二十二話 旗
文化祭の出し物、体育祭の出場種目ともに決め終わり、さて部活だと準備をしていると健三さんに呼び止められた。なんですか、健三さん。
「ああ、実行委員は今日会議がありますから、残ってください」
言うの遅いよ健三さん!
「なぜ今になって?間に合ったからいいようなものの、会議って結構大事じゃないんですか?」
「大事ですねえ」
「ならどうして」
「忘れてたからです」
「……義人、会議行くぞ」
健三さんだから仕方ない。あそこまできっぱり言われるとお手上げだ。どうしようもなかろうて。
「……ということで、文化祭では模擬店を出すクラスが多すぎるため、くじ引きで出せるクラスを制限させていただきます」
まあ当然の判断だな。ほとんどのクラスが金儲けに突っ走ってるからなあ……。メイド喫茶が多いのも目を引くが。この学校はおかしいと思う。常識的に考えて。
「フフフ、こういう時のための旦那だ」
「何の話だ?」
「旦那は執事喫茶に反対だろう?」
「そりゃそうだ。客商売なんて柄じゃない。まして執事ってことはスーツ着るんだろ?服が汚れるのも遠慮しておきたい」
「旦那ならそう考えていると思ったよ。さあ、くじ引きに行くんだ!」
「お前、やりたくない奴が引いてどうするよ?負のエネルギーで出店不許可を呼び寄せるぞ」
「旦那なら大丈夫。その有り余る不幸オーラで、自分に不都合な展開にもっていくんだ!」
なんて嫌な信頼だ。
「そう都合のいい展開になるわけないだろ。外れくじでも引いて来てやるから、涙を流す準備でもしておけ」
そう、いくらなんでもそんなベタな展開になるはずが―――――
「旦那、流石だ。旦那の不幸属性は世界を平和に導くこと請け合いだ」
……話しかけるな。落ち込んでいるのがわからないのか。
「あそこまでー、フラグを立ててしまったら狙ってるとしか思えないよねー」
「フラグ?」
「執事喫茶やりたくないとかー、出店不許可を呼び寄せるとかー。もうこれは外れくじを引くのなんて不可能でしょー」
「結果見事に当たりくじを引いてきたからな。当たりなのに血の気が引いてる旦那は見てて面白かったぞ」
「待て。なぜ当然のように石井は会議時の俺たちの会話を知ってるんだ」
石井は体育祭実行委員の会議に行っていたはず。
「んー、盗聴ー?」
「犯罪!」
「別にいいじゃねえかー。減るもんじゃなしにー」
「頼むから将来、夕方のニュースとかで現れないでくれよ」
「大丈夫ー。キャスターになるつもりはないからー」
「そっちじゃねえよ!」
「まあまあ旦那、落ち着け。それで結果が変わるわけでもない」
「……裏方に回ればいいか」
仕込みしたり買い出し行ったり料理作ったり、パシリでも喜んでやろうじゃないか。
「それは色々と許されないと思うよー」
「なぜ」
「執事喫茶だからー」
……意味がわからん。