第二十話 一致
「もういっそ休憩所にして出し物はなし、ってのは駄目か?」
「旦那、消極的だと人生損するぞ」
「この場合の消極的というのは実行委員を断りきれなかったことを指すのかな?」
「さあ他に意見は?」
「都合の悪いことはスルーか。どこの政治家だ貴様」
「すべて秘書の計画したことです」
「石井?」
「記憶にございませんー」
「政府高官かお前は」
そのネタはわからん人が多すぎるだろ。自重しろ。
「あとタツミ。俺を巻き込んでおいて何か言うことはないのか」
「一緒に頑張ろうね、なおくん」
「いちゃついてんじゃねえよ司会!」
「タツミ、その流れで言う言葉じゃないだろう。清水は涙をこぼしながらはやしたてようとするな。哀れだ」
「同情するな!」
「……で、意見出せ」
言われたとおり、同情しないことにする。清水はさらに落ち込んでいる様子だが、無視。
「迷路はどうだ」
「迷路?」
「北高の外れにある森を舞台とした企画で、<勇者のキノコ>を手に入れて帰ってくるものだ」
「……<勇者のキノコ>って露の季節に生えてて、消えたかと思ったら最近また各地で発生しているあのキノコか」
「ああ」
「なぜ勇者?」
「見事持って帰ってこれたものには<勇者のキノコスープ><勇者のキノコ炊き込みご飯><勇者のキノコソテー>をプレゼント」
「腹下すわ!過去にそんな人いた気もするけど!!」
「あの森ってー、昔は墓地だったらしいよー」
「そんな不気味な情報今はいらんから!」
「お化け屋敷に変更しよう」
「屋敷じゃねえだろ」
「お化け森林じゃ格好つかんな」
「お化け墓地だと偽装になってしまうしな」
「この案も駄目だな」
こんな理由で止めるのか。いいけど。
「うーん、しかしいい案はないものかな」
考え込むものの、これ以上の案は出ないようだ。となると……。
「今まで出てきた案でよさそうなのは?」
「執事喫茶だな……」
一番受けがよかったのがこの案だ。悲しいことに。
「一応多数決をとるか……執事喫茶でいいと思うって満場一致!?」
北朝鮮の軍隊かと思うほどビシッと手をのばすクラスの面々。タツミも手を上げていることに切なさを感じながら、決定を告げる。
「……うちのクラスの出し物は、執事喫茶に決めたいと思います……」
歓声を上げるクラスメイトを見ながら、今日何度目とも知れないため息をつく俺なのだった。
「旦那、ため息つくと幸福が逃げるぞ」
「今までに幸福が溜まったことなんてねえよ」