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第一話 新

 校長の長話(ほとんどの生徒が聞いていないのによくしゃべる)が大半を占めた始業式も終わり、俺たちのクラスは教室に集まって、わいわいがやがやと雑談をしていた。本来ならホームルームが始まってもいい時間帯なのだが、担任の健三さん(文の才能に満ち溢れているのに、その才能を有効活用する気がない駄目人間。反面教師という言葉がしっくりくる変人の代表格)が例によって遅刻している(チャイムが鳴ってからしか職員室を出ようとしない)ためである。……この状況になれてしまった俺たちは敗北者なのだろうか。

「はい、席についてくださいね」

 などと考えているうちに健三さんがやってきた。遅いですよ。

「センセー、ここにいるってことはサマージャンボは駄目だったんですか?」

 そういえば夏休み前に夢見がちなことを言ってたな。

「うるさいです黙りなさい!」

 大人げねえ!

「今回は別の可哀想な人に分け与えたんです」 

「何を?」

「高額賞金の当選権をです」

 要は外れたんだな。妥当なところだろう、うん。

「今日は皆さんに新しいお友達を紹介します」

 ここは小学校ですか。

「面倒ですので本人に出てきてもらって自己紹介してもらいましょう。どうぞ」

 前置き短っ!そこはせめて、ざわつきが収まるまで待とうよ!


 ガラガラと教室のドアを開けて現れたのは、女子だった。清水を筆頭に一部の男子から歓声が上がる。

「親の仕事の都合で転校してきました、石川辰美と言います」

 ……ん?どこかで聞いたような……?

「趣味は繁華街をぶらぶらすることです。豊橋市ここらへんには知り合いが少ないので仲良くしてくださいね!」

「するぞー!美少女は大歓迎じゃー!!もういっそむしろ健全な関係でいいんで付き合ってください!」

 うるさいぞ清水、黙ってくれ。俺は今、大切なことを思い出している気がするんだ。っていうか「でいいんで」ってどういうことだ。本来はどんな関係を望んでたんだお前。

「何か質問はありますか?」

 こう言うのって普通教師が言うものだと思うんだが……健三さんに司会進行を期待しても無駄か。さっそく読書中(草莽枯れ行く)で自己紹介を無視してるし。最低だな、あの教師。英とにもっと興味を持てよ。……それはともかく、名前だ、名前……。

「出身地はどこ?」

「神奈川県茅ヶ崎市です」

 ……茅ヶ崎?

「知り合いが少ないって言ってたけど、少しはいるってこと?」

 ……まさか。

「います。深い関係の人が一人、しかもこのクラスに」

 この発言にクラス全体がざわつく。

「どうした旦那、顔が真っ青だぞ?悪いものでも食ったか?」

「……義人、助けてください」

「<世界の中心で愛を叫ぶ(セカチュー)>か」

「誰?誰?」

「俺か!?」

「落ち着いてください。その人の名前は―」

 案の定、転校生石川辰美は俺の方を見てこう言いやがった。

「なおくんこと三井直樹、私の幼なじみです!」

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