第十五話 買物
「先輩、私たち他人から見たらカップルに見えますよね?」
「……お前がそう見えるように仕向けてるんだろうが……。嫌ならとっとと止めて俺を外に出せばいい」
「嫌じゃないですよ!!」
うわっ驚いた。急に大声出すな。注目されるだろ。手遅れの感がしないでもないけど。
「そうだよな、お前は俺への嫌がらせを日々の糧にしてるくらいだ。俺の羞恥を存分に見ることができる今の時間が嫌なわけがない」
「……先輩は私をそんな風に見てたんですか……」
「違うのか?」
今まであれだけ俺を恥ずかしがらせることに頓着してきたんだから、この予想は九割方当たっていると思ってたんだが。
「……鈍感」
「ん?」
「なんでもないです」
「先輩、この店のアクセサリーはどれもいいと思いません?」
「俺、アクセサリーに興味ないし」
「いいと思いますよね!」
強制かよ。
「まあいいんじゃないの?よくわからんけど」
それでも同意してしまう俺は弱い人間だ。イエスマン三井と呼べばいいじゃない。
「そ、それでですね!」
「どうした?」
「こ、ここにあるアクセサリーを一緒につけられる関係になりたいと思いませんか!?」
……はあ?
「すまん、話がよく見えん」
「だからですね!ここのを、お揃いで、買いませんか!?」
……つまり。
「俺に首輪をつけて所有者にでもなるつもりか!?」
「……どうしてそういう結論になるのか、頭を切り開いて確認してあげましょうか?」
怖っ!!!
「だってここペット用のコーナーじゃん!」
「……気が付かなかったですね」
気づけよ!お前何しにここに来てるんだ!?瞑想か!?
「でもせっかくだから買いましょう、大型犬用のやつ」
「結局買うのか!」
使用方法が気になるが、怖くて聞けん!
「……あのですね」
「うん?」
「あの指輪、お揃いで買いませんか?」
「恥ずかしいから止めてくれ」
「……そう、ですか……」
うむ?なんか落ち込んでるな。罪悪感を感じる……。
「そんなに欲しかったのか、その指輪」
「指輪自体が欲しかったわけじゃなくてですね、その……」
「ん?」
「こ、この店のが欲しかっただけです!」
「この店の商品が……女子間ではやってるのか?」
「そんなところです!」
そんな気合いを入れて言わなくてもよかろう。
「……仕方がない、そのミサンガくらいなら買ってやろう」
「……え?」
「なんだ?いらんのか?」
「せ、先輩は買うんですか?」
「一見の客と思われるのもあれだし、ミサンガなら安いしな。買う」
「ならお揃いですね!?」
いやにお揃いにこだわるんだな。
「……まあ、買うならそうなる。で、どうする?」
「いただきます!」
嬉しそうな様子からして、保護者の機嫌は直ったようだ。よかったよかった。
「……先輩?どうして三つ買ったんですか?」
「あ?いや、転校祝いでタツミにもやろうと思ってな」
神奈川土産(崎陽軒の肉まん)ももらったことだし、お礼せんといかん。
「…………」
「あれ?どうしたほ……瑠璃?顔が怖いぞ?」
あと変なオーラがほとばしっているようにも見えるのは気のせいか?
「せ……」
「せ?」
「先輩のバカーーッ!!」
「ひでぶ!?」
男の急所を蹴り上げた保護者は、大声で叫んで駆けていった。……ミサンガを持っていったところを見ると、気に入ったようなのになぜ……。理不尽な……。
俺は泣く泣く前かがみになりつつ帰路に就くのであった。
とりあえずラブコメパートいったん終了です。次回からはコメディー中心。ラブコメ部分が上手くいっているか作者にはわからないため、意見を送ってください。よろしくお願いします。