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第十四話 羞恥

 映画館を出た俺たちは、近くにあるアクセサリーショップに来ていた。今まで一度も来たことがないことに加え、こういった店は女性客が圧倒的に多いため居づらいことこの上ない。おまけに数少ない男性客も、カップルで来ている客のようで俺の気まずさを助長している。俺だけこの店で浮いているんじゃないか?

「……ということで店から出ていてもいいか?待っててやるから」

「恥ずかしいんですか?」

「恥ずかしいな。俺の心臓はノミ並みに小さいんだ。知らなかったか?」

「堂々と開き直らないでください。このチキン野郎」

 チキン野郎!?

「……チキンでもポークでもいいから、この店から出させてくれ。こういった店は、女性とかカップルとかが来る場所であって、俺みたいな独り身かつ非モテ男がいるべき場所ではないんだ。だから店から出させてくれ、な?」

「非モテ男ときましたか、この鈍感KY屑男が」

 鈍感KY屑男!?

「……でもつまり、ここにいてもおかしくない状況になればいいんですね?」

「そんなことができればいてやっても構わんが、実際不可能だろ?だから早く外に出させてくれ」

 俺の羞恥心メーターが今にも振りきれそうなんだが。

「無理じゃないですよ」

 ……保護者、何なんだそのにやついた顔は?いかにも「私いいこと考えちゃいました!」みたいでひどく不吉。物凄く不吉」

「いや無理。だから外に……うわっ!?」

「これで、先輩がここにいても不自然じゃないでしょう?」

 満開の笑みを顔に張りつかせた保護者は、自分の腕を俺の腕に絡ませてきた!

「お、お前何やってんだ!?」

「うふふー、腕組んでるんです」

 そんなことはわかっとる!

「は、恥ずかしくないのか!?」

「先輩は恥ずかしいんですか?」

「恥ずい!やめれ!」

「ふふー、絶対にやめません」

「こ、こういうことは恋人同士がやることであってだな、そう簡単にやるものではないだろう!?」

「そこですよ!」

「はあ!?」

「こうしていれば恋人同士に見えて、先輩がここにいてもおかしくないでしょう?」

「それはそうかもしれんが、別の意味で恥ずかしくて死ぬわ!」

「先輩は純情ですね」

「初戦俺はチキン野郎だからな!だから止めい!」

「いちいち言ったことを根に持たないでくださいよ。絶対にやめませんよ。命令です」

 なんて傍若無人な!?

「うるさくしてると余計に目立ちますよ」

「……お前は俺を窮地に追い込むのが巧すぎるだろ……」

 後輩に苛められる俺って一体……。

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