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第十二話 破壊

 保護者に付き合わされることとなった土曜日、俺は待ち合わせ場所に向かっていた。ここからならあと五分でつく距離で、待ち合わせ時間まであと十分だから、五分前にはつく計算になる。やはり人として五分前行動を心掛けたいよな、うん。ガキっぽい?ほっとけ。

「……しかし何をさせられるのか未だにわからんからな……」

 できれば、一日バイトさせられて稼いだ金は全額没収などという展開はご免こうむりたい。拒否権なんてないけど。



「先輩!さあ行きましょう!」

「……その前に何か言うことはないのか貴様は」

「少し遅れましたか?」

「三十分は少しとは言わん」

 なんだこの罰ゲーム?駅でぼーっと突っ立ってる高校生がいたら、普通注目受けるだろ。同世代の奴らがこっち見て、くすくす笑ってやがったぞ。あれは馬鹿にされてたな、間違いなく。

「別にいいじゃないですか」

「時間くらい守れ。お前が決めた時間だろ」

「そんなことはどうでもいいんです」

 それをどうでもいいか判断するのは待たされた俺だ。しかし今日は奴隷的身分のため自粛する。

「先輩?どうかしましたか?」

「……いや、自分で奴隷的身分とか思ってしまった俺って一体……」

「先輩が私の奴隷……」

「よくよく考えたら何の拘束力もない、ただの約束事なんだよな」

「…………」

「そんなわけで、優しい保護者は変な命令は出さないよな?」

「…………」

「保護者?」

「…………」

 何この沈黙?俺の嫌な予感センサー(的中率に定評あり)に反応があるんですけど?

「決めました」

「……何を?」

「先輩は今日一日、私のことを崇めて呼んでください!!」

 何その無茶振り!?

「……保護者様?」

「喧嘩売ってるんですか」

 まあ確かにこの呼び方じゃ崇めてるとは言い難いな。PTAへの手紙じゃあるまいし。

「なら具体的にはどう呼べばいいんだよ……」

「仕方ないですね。具体例をいくつかあげてあげますから、その中から選んでください」

「よしきた」

「まず、<瑠璃お嬢様>」

「質問いいか?」

「なんですか?」

「お嬢様はわかるとして、瑠璃ってどういう意味?」

「先輩は可愛い後輩の名前すら覚えてないんですか死ねばいいのに」

「語尾に罵倒がついてるぞ!?」

「死ねばいいのに先輩は可愛い後輩の名前すら覚えてないんですか」

「俺が問題にしたいのは、罵倒の言葉の位置についてじゃないから!前に着いたら俺の名前が<死ねばいいのに>みたいじゃん!」

「私の名前は古木瑠璃です。脳裏に刻み込んで永遠に忘れないでください」

「大げさな」

「で、どうぞ」

「?」

「だから、瑠璃お嬢様と呼んでください。執事風ならなおいいです」

「……崇めつつ?」

「その通りです」

 ……やるしかないのか。やるからにはベストを尽くす、これ常識。というわけで保護者の顔をじっと見つつ、言い放った。今の俺なら執事喫茶のバイトも余裕でこなせる……はず。

「瑠璃お嬢様」

「…………!」

「どうかなさいましたか瑠璃お嬢様?」

「ちょ、ちょっと待ってください先輩!」

「顔が赤いですよ?熱でもあるんじゃないでしょうか、おでこを出してください」

「な!?」

「どれどれ……ふむ、熱はないようですね」

「はふう……」

 機能が停止でもしたか?動かなくなった。

「瑠璃お嬢様?」

「…………」

 返事がない。ただの抜け殻のようだ。

「保護者。このままなら俺帰るぞ」

「……先輩、やっぱり執事キャラはやめです。破壊力ありすぎです」

 破壊力って何がだ。確かに俺の尊厳とか、大切なものが色々と破壊された気もするが。

「なら呼び方はいつも通り保護者で」

「第二案にします」

 ……まだ案があるのか、呼び方一つに。

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