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新人戦3

 人生初めての県大会(ただし新人戦)のプール。中学校時代には望んでもかなわなかったこの舞台に、俺は立つことができている。……感動だなあ。この一ヶ月弱、小倉さんに苛められていたのが報われる瞬間だ……と、召集場所で感慨にふけっていたのだが、それだけでも結構な時間が経っていたらしい。係の人が俺たちの組(200mバタフライ一組目)を呼びに来ていた。

「旦那、出番だぞ」

「おお、悪い。サンキュ」

 義人(200mバタフライ二組目のため一緒に召集場所にきた)に教えられ、ようやくそのことに気付いたので、高揚する気分を何とか静めながら飛び込み台の後ろまで歩いていったのだが……。

「きゃー!先輩ー!ふぁいとぉーーっ!!」

「なおくーん!がんばってー!」

 大声で応援する二人の女子のおかげで赤面することになった。なにこれ?公開処刑?

「うわ……恥ずかしい……」

 くそ、義人が送り出すとき妙ににやにやしてやがったのはこれか。応援するにしても、もっと他にやり方だってあるだろうに……どうして他の北高メンバーが見当たらないんだよ。二人が浮いてるじゃねえか。そしてその二人の声援を受ける俺はもっと浮いた存在じゃないか。……ああ、隣の人が何とも言えない表情なのが気になる。てかいっそ無視してくれよ。頼むから。君も「県大会は参加することに意義がある」入賞は絶望的な仲間だろう。……そんな仲間に勝手にされても困るか。

「続いて、200mバタフライ一組目の競技を開始します……」

 ああ、やっと始まる。出たいと思ってたはずなのに、今では早く終わってほしいと思うまでになったじゃねえか。情緒不安定な人か、俺は。

「フレー!フレー!せ・ん・ぱ・い!!」

「なおくんー!がんばってー!」

 ……むしろ帰りたい。



 県で十五位。これが今回の俺の記録となった。とはいえ、標準記録突破の人数が少なかったがゆえのこの順位であり、悪い言い方をすれば下から三番目。自己新記録を出すこともなく、無難な記録で終わった。

「……やはり北高祭で練習量が激減したからか……」

「そうだねー。みんな軒並み成績が落ちてたからねー」

「まあ、今年最後の大会が終わって、これからは多少楽になるだろ」

 部員で集まって、がやがやと雑談をしていると。

「当然明日からは陸トレだ。ノルマは腕立て腹筋背筋スクワットなど、少なくとも百回ずつだ」

「「「…………」」」

「ああ、心配せんでも、メニューはこれだけじゃないからな。期待してまっとれ。解散」

 ……相も変わらず絶望のどん底に陥れてくれやがりますね、この教師は。こうして翌日からの恐怖に苛まれつつ、県新人大会、今年最後の水泳大会が幕を閉じたのであった。まる。






「いやああああーー!」

 あ、石井が発狂してる。ドンマイ。


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