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第十話 権利

「先輩、私との約束覚えてますか」

 タツミが他の部員から質問攻めになっている中(エロ大魔王は俺が鬱になったため中止。タツミには一応ルールを説明した)、突然保護者が話を切り出してきた。

「約束?ナンノコトカナ?」

「……先輩、わかっていて言ってるでしょう?お菓子作り勝負の件です」

 ああ、わかってたよ。お菓子作り勝負での景品の<俺一日使用権>(提案者石井)だろ。……あの直後は何をさせられるのか怖くて、いっそ忘れてくれないかなーとか思いながら過ごしていたくらいだからな……。お盆休みになっても何も言わないから、しめた、保護者あの約束をを忘れてるとか、でも約束は守るべきなのかとか葛藤してここ数日も過ごしていたしな。ある意味では保護者が覚えていてよかったよ。別の意味ではものすごく鬱だけど。

「……で、いつ、どこで何をすればいい?」

 手短なので頼む。……といっても<一日>使用権だし、無駄な抵抗だろう。

「では、発表します!」

「テンション高いな」

「高くもなりますよ!ずっと貯め込んでおいたんですから!」

「なぜその貯め込んでおいた使用権を今になって使うんだ」

「……本来、もっと特別な日に使う予定だったんですけどね……」

「特別な日?」

「そこはスルーしてください」

「ならなぜ予定が狂ったんだ」

「……嫌な予感がするんですよ、石川先輩あのひとには」

「……なんだって?」

 声が小さくて聞きとれん。ワンモアプリーズ。

「なんでもないです。杞憂かもしれませんし……」

 保護者にしては歯切れが悪いな。

「そんなことはどうでもいいんです!それより明日!駅西口!十時に集合です!いいですね!」

 気合入ってるな。何をさせるつもりか知らんけど。

「もし予定があると言ったら?」

「キャンセルしてください!」

 わー、即答ですよ。さらば俺の予定(図書館で、藤沢周平著<用心棒>シリーズ全てを読み返す計画)。こんなことなら借りとけばよかった。

「……それで、明日は何をするつもりだ」

 肉体労働は勘弁願いたい。拒否権ないけど。

「……そうですね」

 なんだその間は。

「明日教えます!」

 もしかして考えてないのか。だとしたら、なんて場当たり的な権利の使用だ。もったいない。……使用される側の感想じゃないな、これ。

「旦那、帰ろうぜ」

「ん?ああ」

 すでにみんなは帰り支度を済ませていた。俺としたことが迂闊だった。

「保護者ちゃんと何を話してたんだ?」

「あの件だよ。お菓子作りの」

「……そうだった。旦那一日使用権、使ってなかったな」

 地雷踏んだ!こいつ、忘れてたのに!迂闊すぎるぞ俺!

「とりあえず考えとくから、忘れてたら、また言ってくれ」

 そのまま忘れてくれ。義人なら別にいいから。



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