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番外編 文化祭

 これは三井が告白された日よりも以前―――北高文化祭当日の朝の話である。この日保護者こと古木瑠璃は、親友である山本岬(健三さんの娘。吹奏楽部)と談笑しつつ、北高へと向かっていた。



「それでね、岬?先輩ったらおかしいんだよ?私がいくらアピールしても全然気づいてくれなくってね?鈍感もここに極まれり!って感じで」

 親友にほとんど不満のない私ですが、この恋愛話の長さには閉口します。恋は人を盲目にするといいますが、ここまで極端なのも困りものです。

「はいはい、その愛しの三井先輩とやらの話はいいですから。私には接点ないですし、その上興味もありませんから。もっとも―――」

「もっとも?」

「そのひどい先輩のことを語る、ルリの顔のにやけっぷりは見る価値が十分にあるのですが」

 いつもはクールビューティーに分類されるであろうルリも、この表情では同一人物には見えません。

「!?そんなににやけてる!?」

「ええ。それはもう……口の端は上がりっぱなし。頬は赤く染まる。幸せそうな様子で結構です」

 これはこれで、可愛いことには可愛いのですが。ルリに告白した男子(全員辛辣な言葉で撃沈させられた)はこの様子を見たらどう思うことでしょうね?

「……ちょっと自重しないと……」

「その言葉も何度聞いたことか。そもそも私の記憶では、卒業して同じ高校に入るまでは会わない、そう熱弁をふるっていたはずですが?」

「うう……仕方ないじゃない!私が暴漢に襲われているところを、颯爽と現れた先輩がボッコボコにのして、「大丈夫か瑠璃?怪我はないか?」と優しく解放するなんていう劇的な再開を果たしたんだから!惚れ直しもするし!会いたい気持ちが抑えきれなくなるのも当然だし!」

「前回とまた話が違ってますよ。脚色しすぎるのはどうかと」

「いいの!そんなに違わないから!」

 これだけルリをおかしくする三井先輩には、少しばかりの嫉妬心を抱きます。噂によればうちの馬鹿親が担任をしているそうですし、ルリと一緒に見に行ってやるのもいいかもしれません。

「ルリ?今日は一緒に文化祭を回るのですか?」

「うーんと、先輩の出し物に行くまでは一緒に回ろう?ただその後は……」

「ああ、愛しの三井先輩とデートですね?」

「で、デートだなんて!?まだ約束も取れてないし!?」

「手はずは整っているのでしょう?杉田先輩とやらが暗躍しているそうじゃないですか」

「……杉田先輩は事態をややこしくする天才だから、まだ何が起こるかわからないんだよね……」

「中学にもいくつかの伝説が残ってますしね」

 ある意味人物だったようです。惜しむらくは誤った方向にしかその力を発揮しなかったことでしょうが。

「まあいいでしょう。その時間からは別行動ということで」

「ありがとね」

 お礼を言われる筋合いはありませんよ。自分の意志で執事喫茶に行くつもりではありますし。ついでにルリのでれでれな様子でも眼に焼き付けておきましょうか。

 

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