第百四話 始まり
一方、タツミは保護者とは違い、すぐには動かなかった。利害を計算でもしているのか?だとしたら諦めるのも時間の問題だろう。
「タツミ、お前はこの保護者と違って聡明だろう?だから、新しい恋愛を始めた方がいいことがわかるな?」
「……なおくんは、私のこと好き?」
「な、何って?」
「だから……好きか嫌いかのどっち?」
……二者択一かよ。
「……まあ、それなら好きに入るな。ただ、恋愛感情を持っての好き、ではないぞ?義人を好きとか、そういう友人としての好き嫌いだ」
誤解を生んでしまってはいけないと思い、付け加える。しかしそれでも、タツミは意思を変えようとしなかった。
「……それなら、これからなおくんが私に恋愛感情を持つ可能性も十分にあるよね?」
「……お前ら、俺の説明聞いてたか?」
「説明を理解したからといって、はいそうですかと違う人を好きになる……そんなことなんてできないよ」
……そういうものか?
「それに……」
ちらりと保護者の方を見てから、さらにタツミは続ける。
「古木さんよりも、私の方がこれからなおくんと一緒にいる時間は多いしね」
「ああーっ!そういうこと言うんですか!宣戦布告と受け取って構いませんね!?」
「別にいいよ?私の方が有利な状況なのには変わらないし……正々堂々と争おうね?」
「自分の方が有利だといっておきながら、正々堂々とはどういう了見ですか!だからといって退きませんけどね!受けて立ちます!」
……俺の意志を無視して話が進んでいる……。
「なおくん、今度から一緒に学校に通おう?なにせ一緒の学校に、しかも同じクラスにいるんだから!」
「先輩!約束覚えてますよね!私に勉強を教えてくれるって!休みの日は一緒にいましょうね!」
「なおくん、同じ水泳部だもんね!一緒に練習して……一緒に帰ることだってできるね!」
「先輩、私が今度からお弁当を作ってきましょうか!?料理ができる女性ってよくないですか!?」
「むむむ……」
「うう――っ」
アピール合戦に続き、睨みあいまで始まってしまった。誰か!誰かこの事態を収束できる人物はおらんのか!?
「なおくん!」
「先輩!」
「はいなんでしょう!?」
おおう、あまりの迫力に、どもってしまったじゃないか。
「絶対に振り向かせてみせるからね!」
「先輩を私の虜にしてみせます!」
……闇のゲームとはこういうことを言うんじゃなかろうか。
こうして高校一年の秋、俺は二人の女子に奪い合われることになったのだった――――
俺たちの戦いはこれからだ!……みたく終わろうかと考えたのはここだけの秘密です。でもとりあえず二部は完……かな?あとは番外編を書いて……そのうちまたアンケート取ります。