第百二話 真摯
「ままま待て、冷静になれ保護者!」
「……なおくんが一番冷静になるべきだと思うな……」
この場にいる三人の中で、まだ一番落ち着いているのはタツミだろう。それでも余韻が残っているのか、ほほを染めたままだが。
「冷静でなんていられるもんですか!好きな人に告白したんですから!」
確かに、顔真っ赤、手をぎゅっと握りしめた様子からは冷静さを感じ取れない。ほっといたらこのまま蒸発してしまうんじゃ?というような興奮の仕方だ。
「落ち着くには……そうだ、深呼吸!深呼吸をするんだ!保護者、息を吸え!」
「落ち着く必要なんてないです!いいから先輩は、私の想いを受け止めてください!」
「わ、わかっとる!」
こんなこと人生で初めてだから、少しばかり気をとり乱しただけだ!俺はすぐにでも冷静になれるぞ!
「……なおくんこそ深呼吸しなよ……」
数度、深呼吸をしてどうにか冷静さを取り戻した俺。いつものクールな俺に少しは戻れた……はず。
「……タツミも保護者も、正気なんだな?」
「……うん……」
「……はい……」
この二人とはいえ、さすがにこんな大がかりなドッキリは仕掛けないだろう。たとえ義人と石井が裏で暗躍しているとしても、だ。あいつらは人の心を弄んで、後に禍根が残ることをやらない。あくまで皆が笑って終わりを迎えられるよう図るだろう。、
「……つまり、俺はこの告白に答えなければならんのか……」
「べ、別に今すぐにじゃなくてもいいんだよ?私のこの気持ちを知っておいてくれたら……」
また恥ずかしさが込み上げてきたのか、タツミは答えを急かさなかった。もしかすると、怖気づいたのかもしれない。
「私は早く答えが欲しいです!先輩!女性を待たすものじゃないですよ!いいからイエスかノーかで答えてください!」
まだ顔が赤い保護者は、タツミとは逆に、答えを急かしてきた。時間がたてば、それこそどうかなってしまいそうだからだろう。
「……正直な気持ちを言うべきだろうな……」
この二人の真摯な思いに応えるよう、口を開いた。