アラン、遺跡に到着する。
俺の目の前には、森の木々に囲まれた、これでもかと言うほどベタな遺跡がある。
遺跡の入り口には頑丈そうな扉があり、明らかに仕掛けがありますというくぼみや紋様、動かせそうな石が張り付いている。
ツタの絡まったその入り口は、歴史を感じさせる佇まいだった。
「さて到着しました謎の遺跡!」
「いせき~」
アドとココが両手を天に突き上げてはしゃいでいる。
遺跡を見学に来た親子か兄弟みたいに見えるが、あいにくとそんな観光遺跡は王都のど真ん中にしかない。
貴族にとってのはした金を払うと、国民の一ヶ月分の生活費で見れる、ちゃちな仕掛けが見学できる場所だ。
「さぁいくぞアラン! そこに未知の冒険が、俺たちを、待っている!」
「いるっ」
アドは、ココと一緒に手をブンブンと振り回してはしゃいでいる。
本当に観光に来たようにしか見えない。
となりのココとどちらが子供か解らないほどのはしゃぎっぷりに頭が痛くなる。
「あのな、アド。お前は昔っから遺跡を見ると突っ込んでいくけど――」
「さて、お宝に会いに行くぞ~」
「ぞ~」
「いや、話を聞けアド! っていうか会いに行くお宝ってパンツ……ってそうじゃない、お前は――」
アドは俺の肩に手を置くと、親指を立てて歯を輝かせる。
「男だろ? 行かなきゃな!」
「そのセリフやヤバイ奴にしか聞こえない!」
パンツを探しに行く理由。男だから。
ある意味正しいかもしれな……いや、正しくない。
落ち着け俺。
こいつ等は皆どうかしちゃってる奴らなんだから、俺がしっかりしないと!
「アド。俺はちゃんとパンツを見つけるまで油断して欲しくないんだ!」
あ、違う。これじゃない。
「解ってるぜアラン。お前も、ココの――」
「違う。それは断じて違う。それにココは下着とか必要な――」
「それはダメだと思うぞ?」
は、話が通じないッ!
頭を抱えて居ると、ココが俺の袖を引っ張る。
「はやく。ショーツ」
あぁもう。
「解った。危ないから、ちゃんと戻ってなさい」
ココが頷く。
こういう素直な所を、アドにも見習って欲しい。
「って、待てやアド」
一人で遺跡に突っ込もうとしているアドの手を引っ張る。
「ぬぁ。アラン、痛いだろ」
「ぬぁ、じゃない。お前少しは学習しろよ。こういう遺跡は入り口にトラップがあって、大抵侵入者に対してだなぁ」
「なんでお前はわかりきったことをいちいち言うの?」
「お前が解ってないからねっ! お前の為なんだからねっ!」
そろそろブッ飛ばしても良いんじゃ無いかとは思う。
「ちっちぇこと気にすんなって。さぁいこう」
「それでココと一緒に心中でもする気か? 右目の時と同じ失敗を繰り返し過ぎ!」
アドが、俺の肩に手を乗せてウィンクする。
「罠も、未知だろ? 体験しなきゃ、損じゃねぇか」
「よし、一発殴らせろ」
俺が拳を構えると同時に、アドが走り出した!
「って、待てコラぁ!」
「やーだよー」
子供かっ!
足はアドの方が早く、一気に置いていかれてしまう。
だが、遺跡の扉は簡単には開かない。そこで追い詰めて――
「あらよっと」
「えぇええええええええええ!」
簡単に開いたっ!
扉にある石や紋様などのギミックをするすると動かし、あっという間に突破してしまった。
「くそっ。忘れてた。コイツはこういう奴だったぁ!」
「お先ー」
ひらひらと手を振って遺跡に入ってしまった。
俺も後を追い、すぐに遺跡に踏みいる。
「まて、アド!」
入ってビックリした。
「うほぅ」
床が無い。
俺の、踏み出した足が、宙を回転している。
「……だから嫌だったんだぁぁぁぁぁ」
いつもの冒険が、始まった。