アラン、変態たちから搾り取る
アドとココに背中を押され、パンティーと連呼する変態たちに近づいていく、
男たちの異様な光景に尻込みしながらも、意を決して話しかけた。
「あーアンタ達――」
「黙ってろサオ付」
「消えろサオ付」
随分と面白いケンカの売り方もあった物だ。
「いや、話を――」
「うるせぇ部分イケメン」
「失せろ顔だけジゴロ」
俺は男二人の剣幕に押され、すごすごとアドたちの元へ引き返してきてひと言。
「何なのあの、アレ!」
それしか出てこない。
そもそも会話が成立しないところを見ると、新手の獣人か何かだろうか。
筋骨隆々のたくましい体つきの男二人が、片方は頭にリボン。片方はひらひらのスカートだ。しかもフリル付き。
気持ち悪いを通り越して、どこか尊敬すら覚える地獄絵図。
そこから生還してきた俺にかけた言葉が、
「よかったじゃねぇか、部分イケメン」
「褒められたね顔だけジゴロ」
だった。
アドとココが俺の肩に手を置いて慰め……てるんだよな、きっと。
俺が頭を抱えていると、アドが男たちへ近づいていく。
何をする気だろうか。
そう考えていると、いきなり顔面パンチから足を引っかけて転ばせて、ビックリしているもう一人の手首をひねって倒れた男の上に投げ飛ばした。
「さぁ、平和的な話し合いをしようじゃないか」
暴力の嵐。
とんでもない平和があった物だ。
「お、俺たちに何をする気だ!」
「っく、殺せ!」
「いやお前等意味がわかんねぇ」
アドは重なった男たちの上に、腰を下ろし首をひねる。
そしてニヤっと笑うと、こちらを指さして言う。
「俺って言うか、あちらのお兄さんが、あんたらにお話があるそうだ。聞いてやってくれよ」
責任をなすりつける気か?
自分の行動の全ては俺にある、と言わんばかりの態度だ。
「おい。用があるのは俺じゃ無くてお前だろ!」
さすがに異議を唱えたい。
そもそも俺はこんなネタよりも、もっと金になりそうな仕事を探す方が大事だと思っているんだ。
「いやぁ。平和的に解決出来そうにないなら暴力も辞さない。アァァァラン・ウィィィィラドさんはすっごぉぉぉぉいお人さぁぁぁぁ」
「お前、マジで止めろ」
急に巻き舌で煽り始めたアドの頭を思いっきり殴りつける。
「大体俺は魔法のパンティーなんて興味が――」
「「ショーツだバカヤロウ!」」
男二人が声をそろえて叫んでくる。
その熱のこもった眼差しがとても怖い。
そしてリボンとスカートからちらちらとはみ出ている筋肉質で男臭い体つきが気持ち悪い。
こら。サッとスカートの裾を直すな。
「アド。ダメじゃないか、間違えちゃ」
「知らねぇ。俺は興味ないって――」
「「キサマ、我らを愚弄する気か!」」
「むしろ愚弄しない奴がいるなら聞いてみたいわ!」
「アラン」
いけないいけない。こんな奴らに俺のメンタルをやられるわけにはいけないんだ。
そう思っていた俺の袖をココが引っ張る。
「ん?」
振り向くと、背の小さなココが上目遣いに、
「ショーツ、欲しい」
と言った。
こんな可愛い子をこんな腐った場所に連れてくるアドが信じられない。
何かあったらどうするというのだ。たとえば変な男たちに――。
「ウホッ。幼女がショーツ発言ダゼ!」
「幼女の白いショーツ、白いショーツ!」
こんな風に絡まれるのが心配だから、連れてくるなって言ったんだ。
「取りあえず男共の目は潰しておくとして」
「待て、キサマ。何故指を鳴らしている! 近寄るなぁぁぁぁぁ!」
男の眼球にハードタッチをしようとしたところでアドに腕をつかまれる。
「おい。元はと言えばお前が原因でこんな事に――」
「待てよ。幾らゴミのようなゴミでも、立派にお金を落としていくゴミなんだ。処分するなら情報だけ搾り取ってからにしようぜ?」
「お、お前、それは我らを庇っての発言では無いぞ、処分することになっているぞ!」
「アド。俺もそれに賛成はするが、魔法のショーツなんて存在しない。妄想だ」
俺の腕を掴んでいるアドの手を引きはがし、ため息をついて二人を連れて帰ろうとしたときだった。
「待てキサマ等!」
男たちが、地面に伏せたまま叫んだ。
アドがいなくなって立ち上がれるだろうにと思い見ると、いつの間にかしっかりと親指がヒモで結ばれていた。
「我らを解放して――」
指を鳴らしてアドが近づいたところで、
「いやなんでもアリマセン。情報をあげるので、取引を!」
男たちが泣いて許しを請う。
……何も悪いことはしてないんだけどね。ココを卑猥な眼球で見つめたくらいで。
「ま、魔法のショーツは選ばれし幼女だけがそうび――いえなんでもありません、近くの遺跡で見付かった隠し部屋にあるんだそうです!」
アドに睨まれ、口上を止めて必要な事だけを喋りだした。
……なんだかこっちが悪い子とをしている気がする。
「詳しく場所を教えるから解放して。出来たらそこの幼女のショー、ナンデモアリマセン」
必要な情報を聞き出したら、取りあえず男たちの目は潰そうと思う。