アラン、アドとココに振り回される
「アド、いい加減に酒を飲むのは止めないか!」
世界各国の冒険者が集う王都の小さな居酒屋『桃色の小豚亭』で、幼なじみで腐れ縁で相棒のアドの頭を叩く。
テーブルを挟んで向かい合いながら料理と酒をいただくが、コイツは加減を知らない。
アドはいつも、ボサボサの髪に適当なボロの服。その上から皮鎧を着込み、腰には小さな短剣をぶら下げている。冒険者としては腕が立つのだが、色々とおおざっぱ過ぎるのだ。
だから、苦労して手に入れたマジックアイテムが良い値段で売れたとしても、今日みたいにお祭り騒ぎをして消費してしまう。
故郷の村でオーク退治だゴブリン退治だなんて言ってた頃の方がまだマシだ。
「アラン。お前、アラン」
「おい。せめて何か言え」
何で俺の名前を連呼するだけで終わるんだ、この……ッ。
「アラン。お前、マスターシーフだったのか……ッ。8人に増えてやがる!」
「マスターシーフって何だ。何処の吟遊詩人から仕入れたネタだ!」
「っく。俺の右目が、うずくッ!」
アドが無視しやがった上に眼帯を押さえて苦しそうにしている。
コイツ、いつまでこの設定やる気だ?
「アド。いい加減にしないと、ココに怒られるよ?」
「うーん。あの幼女にすごまれてもニヨニヨしか出来ないぃぃぃ」
アドは口に手を当てて吐き気をこらえている。
もう、勝手にしてくれ……。
「あぁ、そうら。アラン」
ろれつが回って無いじゃないか……。
「何だよ」
「俺の髪、あしら、きってくれ」
無言でアドの頭を掴むと、これでもかと力を込め、ワシャワシャとかき回してやる。
服も髪も『適当で良い』だなんて。もう少し頓着してくれ。
未だに何年も着回しているボロを着るのは止めて欲しい。
……装備は念入りに手入れするくせに。
「なぁにすんだょぅ」
「いっそ首と胴体をスパッと切り分けてやろうか」
「お前には、無理だよぅ」
アドがへらへらと笑いながら言う。
よし、首と上半身と下半身にわけてやろう。
俺がそう決意したときだった。
「アランが正しいぞ、アド!」
アドの頭をフォークで叩く幼女が現れた。
「痛ったい! 止めてココ! それ死んじゃう奴!」
ココ・ミルウェット。
推定年齢『2000歳』の『精霊』だ。
むかーしむかし、アドが冒険者になりたいと村の周りを走り回っていた頃、村の近くのほこらに眠っていたのが、この幼女だった。
生まれたとき、溢れる魔力が抑えられず周囲に被害を与えていた所、旅の高名な僧侶とかいううさんくさい奴に封印され、ようやく魔力が安定したとかなんとか。
しかし、ココの為にもこういう場所に長居をするのは危険だと思うのだ。
ココは蒼く澄んだ空のような髪と白く透き通るような肌。それに合わせるように白いワンピースを着ている、
そんなこの世の全てのかわいらしさを集めたような彼女に、この場所がふさわしいとは思えない。
それにしても、2000歳というなら、もう少しこう、大人の女性になっていても良いんじゃ無いだろうか?
主に、体が。
「アランは、私によくじょうしているのか?」
そうだな。酔っ払ったアドが不意にココを押し倒したりしないよう……え?
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」
断じて、違う!
確かに幾ら眺めても飽きないほどのかわいらしさだが、そんな気持ちは無い!
「アラン、お前……ココがそんなに?」
「違っげぇから。お前、違っげぇから!」
「動揺しすぎだろ……。酔いが覚めちまったよ」
「っく」
俺は少女趣味ではあっても小児性愛者ではない。
可愛いらしい少年少女の人形を作って生計を立てたいという夢はある。
だが、断じてそういうのは無い。
そもそも守るべき対象の児童をどうこうしようなどとは欠片も思わない。
「良いかお前等。俺にはそういう――」
俺が言い終える前に、近くのテーブルから激しい怒号が響いてきた。
「っこの。お前、魔法のショーツに夢が無いとか、狂ってんのか!」
「何が魔法のショーツだ。ショーツは幼女の脱ぎたてが一番だって行ってんだろうが!」
見ると、頭にリボンを付けた冒険者風の男と、ひらひらのスカートを穿いた冒険者風の男がつかみ合いをしていた。
「よし、アド。ここにココを置いてはおけない。さぁ帰ろう」
あんな変態にココを近づけてはならないと、俺の感覚の全てが告げている。
「おまっ、マジか。そのセリフ」
「? 何のことか解らないが早くしろ。さぁ、ココも」
二人を引っ張りながら外に出ようとしたときだった。
ココが俺の服の裾を引っ張りながら言う。
「私、魔法のショーツに興味がある」
……勘弁してくれ。
こうして、俺、アラン・ウィラドと、相棒のアドことアドリアーノ・ジェットの冒険の日々が始まるのだった。
皆さんは、ファンタジーは好きですか?
私は好きです。特に、御飯食べてるところとか。
そこにエルフとケモ耳の美少女がいたりしたら最高です。
……済みません。まだ幼女しか出ません。