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五話 失ったことで、気づく恋。
「おはよー……」
純の遺体を見たあと、俺はどうやって帰ったのか覚えていない。
気がついたら、自室のベッドの上にいた。
一睡もできなかった。
目を閉じたら、純の顔が思い浮かぶから。
「涼、今日……学校、休む?」
母さんが、心配そうに顔を除き混んでくる。
「……いや、いい」
「でも……大丈夫?」
「何が」
「純ちゃんのこと……」
それを聞くと、途端に頭痛が襲ってきた。
「っ……」
「り、涼っ!やっぱり……休んだ方が……」
「……大丈夫だって」
頭を押さえて、俺は答えた。
少し迷った。
学校に行っても、純はいないのだから。
あの桜を、見たくもなかった。
純を奪った、桜なのだから。
もう、桜なんか大嫌いだ。
もともと、俺があの桜を好きだったのは、純が好きなものだったから。
昔。純は忘れてしまったかもしれないけれど、「好きなものは好きな人と共有したい」と言っていた。
つまり、そういうことなのだ。
失ったことで、気づく恋というものがあると聞いた。
だからきっと、これも、その一つだ。
「行ってきます」
心配そうな母さんを横目に、俺は家を出た。