二話 小野原純の、手紙。
『涼ちゃんに出会ったのは、いつ頃だったっけ。
多分、私も覚えていない、遠い遠い昔。
覚えていないほど、涼ちゃんと私は一緒にいた。
幼稚園で、私が泣いていた時、涼ちゃんはいつも駆けつけて、慰めてくれた。
私をいじめた男の子たちに、仕返ししにいってくれた。
涼ちゃんは、私のヒーローなんだよ。
恥ずかしいから、絶対に言わないけど。
小学校に上がっても、中学生になっても、涼ちゃんが優しいのは変わらなかったよね。
でも、いつの間にか、優しさの示し方が変わってきたっけ。
中学生になった頃かな?「お前も中学生になったんだから、自分のことは自分でやれよ、忘れ物しても貸してやらないからな、遅刻しそうになっても待っててやらないからな」、なーんて大人ぶっちゃって。「純は俺が守る!」とか言ってたあの頃の涼ちゃんは、どこに行っちゃったんだろうねぇ。
でもさ、知ってるんだよ。
口ではそう言ってても、涼ちゃんの根っこにある優しさは変わらないんだって。
だって涼ちゃん、何だかんだ言いながら、私が教科書忘れたら貸してくれたじゃん。寝坊しても、待っててくれたじゃん。クラスメイトの前で晒し者にされた時、庇ってくれたじゃん。
だからさ、涼ちゃん。
大好きだよ。
ずっと、一緒にいようね。』
「ああもう、これじゃラブレターだよぉっ!」
そう叫ぶと、私は書いたばっかりの手紙を放り投げた。
四月二十日は、涼ちゃんの誕生日。
プレゼントは、もう用意してある。
空色の、私とおそろいのセーター。寒がりの涼ちゃんは四月でも着るはず。
私のセーターは綺麗な桜色。涼ちゃんにもこれにしようかと思ったんだけど、男の子ってこんな色もらっても困るよね。
ちなみに、去年の九月から頑張って編んだ私の手作り。
不器用な私にしては、頑張った方だと思わない?
「涼ちゃん、喜んでくれるといいなぁ」
綺麗にラッピングしたセーターを撫でると、私は新しい便箋を取り出した。