妖精の図書館
「なんでこんなに暗いのよ……」
握りなさいよと言った彼女は腕にしがみつく姿勢となった。
「すぐぬけるよ、それよりアーテナって暗闇苦手だっけ?」
「苦手じゃない……と思うわよ」
「ほんとにぃ?」
「嘘じゃないわよ!」
「ふーん、そんなことより胸当たってるよ」
「こ、これは……その、サービスよ!」
「ありがとうございます!」
どんなサービスだよって思うけど今の僕の顔、絶対ニヤついつる。
右腕に神経を集合させろ僕……! これは、歩くたびにたわわな胸が身体と共に心を愛撫してくるようで、つまり理性が破壊されそう!
嗚呼胸って柔らかいんだ……そして暖かく心地いいんだ、まくらにして昼寝したいな……。
あれ、なんか眩しいな。
ああ無情、出口です。
「うわぁ! たくさん本が並んでる!」
暗闇を抜けるとアーテナは鳥カゴから出た鳥のようにはしゃぎだす。
彼女は目の前に広がる新しい世界に胸を躍らせ、文字通り胸もご機嫌な踊り方だ。
そんな姿をリクは保護者のように眺める。そしてここにきた説明をする。
「ここならアーテナについて調べられるかなと思ってね」
突然何よと振り向くアーテナ。
「私について?」
「アーテナは何者なのかとか」
「私は私でしょ。そしてあなたは私のご主人様」
当たり前でしょという顔をしてるけど当たり前じゃないんだよアーテナ。
「いいから探すの! 取り敢えずここには人工生命とかホムンクルスとか精霊とかの本があるはず!」
「わかったわよ」
実際アーテナを呼び出すための資料はここから集めてきた、ホムンクルス云々は抜きにしても何かてがかりがあるかもしれない。
アーテナを呼び出した時、資料とは違う出来事が来て困惑してる。
でも人間変化には柔軟でなければならないと思うんだよね。
アーテナが現実に存在するというならそれも面白いし調べ甲斐があるってものよ!
「さあ調べるか」
誰に聞かすわけでもなく一人つぶやき彼もまたアーテナの後を追って探しにいくのだった。
——そして本棚に隠れるように二人を見つめる陰がここに一つ……