私は茅野月 葵!
パラパラパラ……パラ……パラパラ……。
二人は静かに本をめくる。
この静寂がどのくらい続いただろうか。
高く積み上げられた本は徐々に低くなり残す本もあと僅かになって来た。
「それらしきものは無いわね」
「うん、こっちも似てるけど違うなあ」
読み終えた本は「今からできるイマジナリーフレンド」「あなたの分身タルパ」「怖くない空想の友達作り」などなど。
似てるものこそあれアーテナの核心に迫るものは無かった。
「あーだめかなあ〜見つからないや」
「……ねえ、私ってそんな不思議?」
「不思議さあ! 例えるなら君この図書館と同じ存在だよ?」
最後の本を読み終えた彼女が本をパタンと閉じ。
「そんなに!?」
「そうだよ!?」
自覚ないか!
「実感が湧かないわね……」
「……ごめん仕方ないかもね」
思えば僕だって生まれたことに疑問なんて抱かなかったし、物心ついた時は興味なんて他に向いてた。
「でもさでもさ、だからこそ調べてみるのも楽しいんだよ」
「そ、そう……? でも私は少し怖いわ」
弱々しくそう言い残した彼女は、ゆっくりと席を立ち別の本を探しに行った。
席に一人となったリクは本をめくる作業に戻る。
「怖い、か……」
最後の言葉が不意に心に刺さった。
本に目を落とし。
「ちょっと悪いことしたかもなあ」
「彼女のこと、気になる?」
「んーまあねー」
「そう、にしても彼女不思議でしょう」
「だよね……!?」
はっと振り向くリクの目の前には知らない女の子が立っていた。
「!? っ……こんにちは」
一瞬驚いた彼女はすぐさま平然を装う。
「こ、こんにちは……?」
幸いにも彼女の油断は彼には伝わらなかった。
リクは「こんにちは」のところしか聞こえなかっただろう。