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おじゃまんげ!  作者: 夏川 俊
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8、初体験、再び

8、初体験、再び



 夕食。

 いつもの通り、母と食べる。

「 みちる、ちょいと相談があってね・・・ 」

 何だ? ヒンズー・スクワットが、100回、出来なくなったのか?

「 実は来週、再婚する事になってね 」

 僕は、お吸い物を、ブーッと吹き出した。 それって、相談じゃないだろッ? しかも、来週って・・・! 旅行に行くような、軽~い口調で言うんじゃねえよ、アンタ。

「 え、えらい急な話しじゃない? 誰よ、相手は 」

「 道場の、塚原さん 」

 ・・・あの、ヒゲ親父か。

 いい人だが、ヤツは来年、還暦だぞ? 59歳で、腹筋が6つに割れてるヤツだから、おかしな趣味を持ってる男だとは思えんが、そんな脳みそ筋肉男がウチに来たら、それこそ毎日、稽古になるんじゃないのか? 僕は、イヤだからな? 稽古台になるのは。 はあ~っはっはっは、みちるクン。 いっちょ、モンでやるか? などと、ほざきながら、空手とは関係無い、ニー・ドロップとか、寄り倒しとか、腕四方十字固めとかを、やるに決まってる。 しかも、格闘家なのに、詩吟をたしなんでやがる。 ただでさえ、母の掛け声で、ご近所が怯えていらっしゃるのに、この上、ダミ声で初春の句なんぞ読まれたら、たまったモンじゃない。

 母は言った。

「 式は、日曜日。 そこの婦人会館で、10時からね。 旅行は、行かないから心配しないで 」

 なっ・・ おいっ! もう、ソコまで、決まってんのかよ! ドコが、相談なんだ、アンタ。 業務連絡のように、淡々と、伝えてんじゃねえよ! ・・・保険殺人の、偽装結婚じゃないだろうな? ま、殺害( 撲殺 )されるのは、アッチだと思うが・・・

 もういい。 好きにしてくれ。 僕、疲れたから、寝るわ。

 部屋に戻る僕に、母は言った。

「 再婚したら、夜、あたしたちの部屋に入る時は、ノックしてね・・・! 」

 ・・・死んでも、のぞかないから、安心しろ。


 携帯が鳴った。 星野からのメールだ。

『 フロには、必ず入れ。 ただし、目隠ししたままだ。 こっちは、とりあえず、今日はやめておく。 男なら、1日くらい入らなくても構わないだろう? 』

 ・・・ナンちゅう、無理難題を言って来るんだ、アイツは。 どいつもコイツも、好き勝手しやがって。 はい、はい・・ 分かりましたよ。

 今日は、風呂には入らないと決めていた僕は、既にベッドに入っていたが、渋々、起き上がり、風呂場へ行った。

( くそっ、あっちは既に、お休みモードかよ。 ったく、人の体を何だと思ってやがるんだ・・・! )

 ぶつぶつ言いながら、ジャージを脱ぐ。

 おっと、白いモノがチラつく。 いかん、いかん・・! タオルを巻いて・・と。 ・・・くそう! やっぱり納得いかん。 何で僕だけ、こんな面倒くさいコト、せにゃならんのだ!

 僕は、ジャージのポケットから携帯を出すと、星野にメールを打った。

『 僕は、キレイ好きなので、必ず、フロに入って下さい 』

 これでいいだろう。 ・・・いや、まだ甘い。 再び、携帯を出し、追伸を打つ。

『 入らないと、アソコがムズムズして、かゆくなります 』

 このくらい脅しておけば、大丈夫だろう。 あっちにも、僕と同じくらい面倒を掛けてもらわなければ、不公平と言うものだ。

( いざ、出陣・・・! )

 風呂場の勝手は、毎日の事なので、手探りで分かる。 とりあえず、バスタブに浸かろう。 入ってしまえば、何とかなる。

 僕は、下着を脱ぐと、タオルで目隠しをしたまま、洗い場へ入った。 母の希望で、我が家の風呂場は広めの作りになっており、これが幸いした。 掛け湯もせず、とりあえず着水。

 やった、入れた! ・・って、凄んげえ熱いじゃんっ!

「 ほほッ、うほほッ・・ うほほほォ~うッ・・! 」

 今度はバスタブから飛び出し、洗い場で、飛び跳ねる。

「 熱ちッ、熱ッ、熱ッ・・ 熱ぅい~うあおっ・・・! 」

 足を滑らせ、尻もちを突く。 タイル場での打撲は、結構痛い。( 経験者・談 )

「 痛っ・・ てえェ~・・・! 」

 衝撃で、目隠しが取れた。 目の前にあった大きな鏡に、大股開きをしている全裸の星野の姿が、キッチリと映っている。 その股間のズーム映像が、GPS画像のように、僕の目に飛び込んで来た。

「 ・・・! 」

 見てはいけない秘密の花園と禁断の秘部を、凝視してしまった、僕。

「 うがっ・・・ ごっ・・ ごわっ・・・! 」

 声にならない、うめき声を上げる。 一瞬、気が遠くなりかけた。

 かすみ・・・! これは事故だ。 不慮の事故なんだ・・・!

 やがて湯気で曇り、鏡は、真っ白になった。 もう、何も見えない。

( そうか、最初から、待てば良かったんだ・・・ )

 あとの祭りだ。

 母は、熱い風呂が大好きだ。 この湯加減も、母のせいである。 今日のは、また、特に熱い。 いい加減にせんと、貧血で倒れても知らんからな・・・!

 しかし、先程の映像は、しっかりと僕の脳内CPUにデジタル保存されており、それがゴーストのように、脳裏を横切る。

( くそう・・ とんでもないモノを、見ちまった・・・! 星野に、申し訳ないな )

 ・・・黙っていよう。 話したら、殺されるかもしれん。 いや、必ず、抹殺される・・・!

 でも、僕に責任がある訳ではない。 大体、フロに入れと命令したアッチのせいで、こんな事態になったんだ。 しかも、目隠しというオプション付きで・・・ 星野が悪い。 僕のせいじゃない。

 再び、目隠しをしようとしたら、脱衣所に置いてある携帯の着メロが鳴った。 見ると、星野からのメールである。

『 すまん。 フロ場で、ころんで、ナニを殴打した 』

 ナニやっとるんだ、てめえもっ! 僕の体だぞ。 大切に扱わんか! しかも、ナニを殴打しただとォ~? 竿か、玉か、ドッチだ? 詳しく報告せんか。

 すぐに、追伸が入った。

『 物凄く痛いが、大丈夫なのか? これ。 苦しい 』

 ・・・玉か。 やってもうたな、星野。 さぞや、究極の苦しみであろう。 分かるぞ、分かるぞ~? フツーでは、味わえん、貴重な体験をしとるようだな。 ちなみに、その苦しみは、あと数分続く。 今頃、玉を抱えて唸っておるのだろう。 ・・って、おいっ! 触っとるな? お前っ! かすみだって、触ったコトないんだぞっ! ああ・・ 僕の純潔を・・・! ナンちゅうコト、してくれとんじゃ、お前!

 やがて、星野から追伸が届いた。

『 打った瞬間、ボクッ、という音がしたが、割れてはいないようだ。 安心しろ 』

 割れてたまるか! そんなんっ! 卵じゃねんだぞ?

 ・・・ボクッ、か・・・ 生々しい表現だ。 苦しさに、のた打ち回る姿が、目に浮かぶわ。 相当、強くヒットさせたようだな、星野。 しかし、僕は、見ただけだが・・ ソッチは、見た上に、触ったな? いっこ、多いじゃないか! 不公平だぞ? くそう・・・

 つまらん理屈に不満を感じながらも、目隠しを再開し、髪と体を洗う。

( ・・・ん?  シャンプーが、ないぞ? ドコ行ったんだ? )

 いつものトニックシャンプーがない。 目隠しをずらして探すと、母が使っているメ○ットの横に、見慣れないシャンプーがあった。

( これか・・・ 高そうなヤツだな。 シャンプーなんて、どれでも同じだろうが )

 男には分からない、女性ならではの『 こだわり 』というヤツなのだろう。 ポンプを押すと、明らかにいつものシャンプーとは違う、高級そうな液が出て来た。 どえらい泡立ちである。

( 結構、いいな、コレ。 泡立ちが違うぜ。 香りも良いし・・・ )

 ボトルを戻すと、もう1本、同じようなボトルが、手に触れた。

「 ? 」

 再び、目隠しをずらして見ると、同じようなデザインのボトルがある。

「 ・・・・・ 」

 表示を読むと、ヘア・トリートメントとあった。

「 リンスか・・・ どうやって、つけるんだ? 」

 使用方法を読み、納得する。 ・・・面倒くさい。 女性は、いつも、こんな面倒くさいコトしてヘア・ケアをしているのか?

 ・・・省略してやろうかな?

 しかし、バレたら、星野に怒られるのも想像がつく。 仕方ないな・・ 僕の体じゃないんだし。 ええっと、まず適量を手に取り・・? 髪になじませて、と・・・ふむ、ふむ・・・ ええいっ、目隠しが邪魔だ。 大体、目隠しをしたまま髪を洗う事自体、無理があるわ。

( 取っちまえ! どうせ、鏡は曇ってんだ )

 目隠しを取ってみた。

( ふう~・・! 開放感があるな。 これで作業が、やり易くなったぞ )

 僕は、再び、星野の髪のケア作業を再開した。 まんべんなく、髪全体にトリートメントをする。 でも、やはり面倒くさいのは変わらない。 だが、僕は頑張った。 これも経験のうちだ。( 何の? ) 星野だって、激痛に耐えながらも頑張ってるんだし・・・

 やがて、全体のケアが終了した。 シャワーで軽く髪を洗い流し、僕は、髪をかき上げ、一息尽いた。

 正面の鏡に、星野が映っている。 その胸元には、小高いふくらみと、薄いピンク色の乳首が、2つ・・・

「 げえっ・・? 映ってるうぅ~っ? 」

 ガラスの曇りは、水滴や飛び湯に洗われ、しっかりと鏡の機能を果たしていた。

「 ・・いッ・・ いかん、いかん・・ イカ~ンッ!! 」

 慌てて、棒高跳びの水平飛びのように、バスタブに飛び込む。 ・・のつもりが、片足が入らず、向こう脛がバスタブの淵に激突。

「 うごッ・・! ガボ、ガボ、ガボ・・ ゴボォッ! 」

 頭からバスタブに突っ込み、水死しそうになる。 鼻に入ったお湯に咽せ、向こう脛の痛さに、のた打ち回る。 誰か、もう殺してくれ・・・!

 格闘、数十分。

 風呂場から出た僕は、疲労困憊であった。


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