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おじゃまんげ!  作者: 夏川 俊
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6、愛しき、かすみ

6、愛しき、かすみ



 下校時間。

 サブが、車を回して来た。

「 ご自宅まで、同行させて頂きます、姉御 」

 そう言って、今度は、龍二が車に乗り込んで来た。

「 ちょっと、様子を見ておきたい人物がいる。 寄り道していいか? 」

 僕が言うと、龍二は答えた。

「 構いませんよ。 でも、車からは、そんなに離れないで下さい 」

 僕は、どうしても確認したかった。 それは、入れ替わった星野の様子である。 いつもの今頃は、僕は健一と共に、学校の帰り道にある、かすみの学校前まで行っている時間帯だ。 星野が僕の体でいるのならば、かすみの学校近くへ行けば、健一と共に会える可能性が高い。 ついでに、愛しいかすみの顔も見たいし・・・!

 僕は、サブに言った。

「 多岐学園の近くまで行ってくれ 」

「 ようがす! 」

 ・・・お前、江戸の下町育ちか?


 大通りから、多岐学園の校門に続く広い歩道。 下校して来る生徒たちが三々五々、歩いている。 僕は、少し離れた所に車を止めさせ、道の脇に立ち、僕や健一の姿を探した。 龍二も、僕の傍らに立ち、護衛している。 ・・何か、アブない絵だ・・ 借金取りが、対象者を待ち伏せしているようだ。 生徒たちも、不信そうに見て行く。

「 ・・ねえ、あの人・・ 鬼龍会の星川さんじゃない? 」

「 一緒にいるの、内田 龍二よ、内田 龍二・・! 」

「 えーっ? あの、人間凶器の・・・? 」

 我々の正体に気付いた生徒たちのヒソヒソ話しが、それとなく聞こえて来る。 龍二・・ お前、結構、人気者だな。

 しかし、やっぱ、立っているのは、目立ち過ぎる。 手前にあるコンビニでも行くフリをするか・・・ 歩き始めた僕は、数メートル先に、健一の姿を発見した。

( いた・・! 僕だ! )

 懐かしい! 元の僕が、健一と歩いている・・・! 横には、かすみの姿も確認出来た。

 そのまま立ち止まって見ていると、目の前まで来て、健一は僕に気付き、ビクッとした。そりゃそうだろう。 いきなり、鬼龍会の星野が、目の前に立ってるんだからな・・・ しかも、後ろには、龍二がいるし。

 健一は、慌てて道を譲った。 確認するだけで、会うつもりは無かったが、成り行き上、仕方が無い。

僕は、僕を見つめた。( ヘンな文章 ) アッチの僕も、僕に気付いたようだ。 びっくりしたような顔をしている。 お互い、じい~っと顔を見つめ合い、しばらくの無言・・・

 健一が、元の僕に言った。

「 ・・お、おい、みちる。 なにメンチ切ってんだよ・・! この人、知らないのか? 星川さんだぞ? 鬼龍会の・・! 」

 かすみも、心配そうな顔をしている。 元の、僕の腕を掴み、僕に言った。( ややこしい )

「 何か・・ ご用ですか? この人に・・・ 」

 ああ、かすみ・・! 愛しい声だ。 コッチおいで。 ・・って、来るハズ、ないか。

 僕は言った。

「 少々、時間をくれないか? 星野・・ 」

「 ・・ああ 」

 元の僕は、答えた。

 健一が、うろたえた表情で言う。

「 みちる、お前・・ 星川さんと、知り合いだったんか・・・? 」

 心配顔のかすみと健一を残し、僕は、コンビニ脇の路地に、元の僕を誘った。 龍二は、路地の入り口に立ち、他の者が入れないようにしている。 まさに、暴力団幹部と情報屋との密会のようだ。

 僕は言った。

「 やっと会えたね・・・! あんた、星野だろ? 」

 元の僕が、答える。

「 そうだ。 お前が、星川か・・・? 何か、ヘンな具合だ 」

 お互い、元の自分を見ているワケだ。 心中、お察し申し上げます。 まあ、あのサバラスの被害者同士でもある。 僕は、星野に、妙な親近感を覚えた。

「 同感。 おかしな宇宙人には、会ったかい? 」

「 ああ。 最初は、信じられなかったがな。 でも、信じるより他にあるまい。 お互い、えらい目に遭ったな・・・! 」

 今朝から、僕が経験した幾多の災難は、星野にとっても、同じ事だったのだろう。 お互い、言わずとも知れた苦労を、目で確認しあった。

 星野が言った。

「 お前の方の環境は、別段、何の問題も無い。 平和そのものだしな。 だが、そちらは違うだろう? 」

 そうなんです。 もう、早く戻りたいっス・・・!

 僕は答えた。

「 とりあえず、護衛がしっかりしてるからイイけど・・ 何かあったら、どうしようもないよ。 空手やってるお袋から、多少は護身術を習ったコトあるけど、実践したコトないし、実際、あまり役に立たないと思うんだ 」

 星野は言った。

「 マサと龍二は、信頼していい。 局長の芹沢には、会ったか? 」

 僕は、無言で頷いた。

「 涼子は、突っ走るクセがある。 助勤の正木もだ。 ちゃんと押さえてろよ? 」

 よく分かってます。 はい。

「 ところで、お前の親友の、健一ってヤツだが・・・ 」

 星野は、健一の方を振り返り、小声で聞いて来た。

「 ・・・ヤツは、アホか? 」

 アホっす。 きっちり、アホっすわ。

「 ちょっと抜けたところがあるけど、いいヤツだよ? 」

「 ・・会話に、ついていけない時があってな 」

「 無視したって下さい 」

「 いいのか? 」

「 思っきし、いいです 」

「 そうか・・・ 分かった。 どうも、お前の周りの友人は、初めて接するタイプの連中ばかりでな。 やり難い 」

 おっしゃる事、ごもっとも。

 僕は答えた。

「 マトモなのは、あの、かすみぐらいなモンです 」

 星野は、少し笑うと言った。

「 いい子だな・・・ お前にゃ、出来過ぎじゃないのか? 」

 いちいち、ごもっともです。

 星野は続けた。

「 なるべく、あの子との関係を壊さないように配慮はするが、保証は出来んぞ? 」

「 有難う。 僕も努力するよ。 とにかく、一刻も早く元に戻りたいよ。 気を使う事ばかりだ。 特に、トイレが・・・ 」

 途端に星野は、顔を赤くして言った。

「 お・・ お前っ・・・ み、見たのかっ! 見たんだなッ・・・!? 」

 無く子も黙る、鬼龍会 会頭にしては、かなり慌てて狼狽した様子の星野。 やはり、女性なのだ。

「 見てないよ、そんなのっ! 」

「 そんなの、って・・ どういう言い方してんだよっ! あたしの体なんだぞ! 」

 真っ赤になって、問い詰める星野。 落ち着け、落ち着きなさいって・・!

「 僕だって、どれだけ苦労してんのか、分かってんのか? お前の方こそ、オレの大事な竿・・ むやみに、引っ張りまわしてんじゃないだろな? 」

「 ・・だっ、誰がそんな事、するか! キモチ悪いっ! 用を足す時だって・・ ペーパーを指先に巻いて、してるんだぞっ・・! 」

 似たようなコト、してますなあ・・・

 星野は続けた。

「 全く持って、迷惑な話しだ。 朝起きて、生えてた時には、気を失いそうだったんだぞっ・・! 」

 ふ~ん・・ 僕の時は、無かったからアセったわ。

「 どうせお前・・・ スケベ心満載で、あたしの体・・ これ幸いとばかりに、観察しているんだろう? 変態が! 」

 星野は、泣きそうな顔になって来た。 結構、可愛いトコ、あるじゃないか星野・・・ でも、この際、僕を信じろ。 入れ替わった相手が、健一じゃなくて良かったね?

 しかし、泣きそうになって来た顔は、自分の顔でもある為、見てると少々、気持ち悪い。

「 落ち着けよ、星野・・・! 僕は、そんな変態じゃない。 そりゃ、興味はあるけど・・・ 」

「 それみろっ! やっぱり、お前・・・! 」

「 違うって! かすみに顔向け出来なくなるから、ぐっと理性を保ってるんだ。もし、かすみとの間が破綻すれば・・ 歯止めは、利かなくなるがな・・・! 」

 星野は、しばらく考えていたが、やがて言った。

「 この、あたしを脅迫するとは、いい度胸だ・・・! 」

「 脅迫じゃない。 事実だ 」

 少々、取り乱していた星野は、しばらくして落ち着くと言った。

「 ・・と、とにかく・・・ 変なトコ、いじくり回すんじゃないぞ! 」

「 分かってるよ、そんな事。 恥ずかしくて、出来るかい。 コッチが気絶するわ 」

 会話に、あまり時間を掛けるのは、良くない。 お互いの生活習慣を助言し合い、持っていた携帯の番号とメルアドを交換し、僕たちは早々に、路地を出た。


 コンビニ前では、不安顔のかすみと健一が待っていた。 龍二が辺りを警戒し、僕の後ろに付く。 戻って行った星野に、健一が尋ねているのが聞こえた。

「 おい、何の話だったんだよ・・! お前が、鬼龍会の会頭と知り合いだったなんて、聞いてないぞ・・! 」

 かすみも、不安そうな表情で、こちらをみている。 ああ・・ 心配顔もまた、可愛いね、かすみ。 僕は、かすみに近付いた。 凛とし、逃げ出さずに、じっと僕を見つめている。 頼もしい。 さすが、かすみだ。 健一は『 何? 何? 』という表情で、今にもマッハ3で駆け出しそうな及び腰である。

 僕は、かすみの肩に手を掛けると言った。

「 ・・いい彼を持っているな。 大事にせんと、あたしが取るぞ? 」

 かすみは、じっと僕を見つめている。 ううっ・・ なんて可愛いんだろう。 その、毅然とした澄んだ目で見つめられると、疑うコトすら忘れてしまいそうだよ・・・!

 陶酔する、僕。 かすみの後ろでは、星野が、『 早よ、アッチ行け 』というような目をし、顎をしゃくった。 もっと話をしたいが、関係を疑われたら困る。 まあ、今日のこの情況も、星野なら、何とか説明を付けられるだろう。 かすみ、またね。


 龍二が、手招きをし、サブの車を回す。

 後部座席のドアを開ける、龍二。

 ・・・また、極道の妻のような、乗車の仕方か。 いい加減、この凄んげえ目立つエスコート、ヤメない?

 龍二は乗車する際、健一らをじろりと見たあと、無言で乗車した。


「 姉御。 お友だちですか? 彼らは 」

 龍二が聞く。

「 ・・ああ。 あたしの大事な、情報入手先でもある。 特に、女の方はな。 無二の親友だ 」

「 見たところ、カタギのようですね・・・ 」

 君らは、ヤクザかね?

「 真実は、一般心理の中にあるものだ。 風のウワサは、意外と信憑性がある。 今、我々に必要なのは、偏った情報ではない 」

 エラそうに、僕は、一席ぶった。

「 さすが、姉御。 恐れ入ります・・・ 」

 かしこまる、龍二。

「 勉強になりますわ 」

 サブが言った。

 ・・・お前は、とりあえず、原付でもいいから免許を取れ。


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