28、ココは誰? 私はドコ?
28、ココは誰? 私はドコ?
商店街のイベントは、大成功を収めた。 ヤンキー共も、健全な活動に達成感を感じたらしい。 次回の予定を提案する者は、かなりの数に上った。 イベント開催中も大きな混乱やケガも無く、一日中、2メートルの竹馬に乗って歩き回っていた者が、座骨神経痛になった程度であった。
祥一の母親に対する美津子先生の株は、大きく改善された事であろう。 僕は、満足だった。
「 あとは、元に戻るだけだね! 」
鬼龍会 星野の執務室で、かすみは言った。
今日は、元に戻る日だ。 星野に頼み、もう一度、部屋を貸してもらったのだ。 イベントの打ち合わせと称して・・・
サバラスが、僕に言った。
「 4人の体と入れ替わる経験など、そうそう滅多に出来るものでは無いぞ? 」
・・・1回でも、フツー出来んわ。 恩着せがましく言わずに、早よ、元に戻せ・・・!
星野が、サバラスに言った。
「 美津子先生のの記憶は、ホントにそのまま、自分の記憶として刷り込まれるんだろうな? 」
例によって、電子手帳のようなものを操作しながら、サバラスが答える。
「 フッ・・ 無論だ。 我々の科学を、あなどってもらっては困るな 」
・・・あなどる以前に、信用がおけんわ。 ナマイキに鼻で笑いおって・・ 態度デカイぞ、お前。
かすみが、僕に聞いた。
「 健一は、そのまま、美津子先生の部屋にいるのね? 固まったまま 」
僕が答える。
「 ああ。 僕の体を、健一の真ん前に置いておいたから、元に戻った瞬間、ヤツは美津子先生のお説教中、というワケさ。 いいシチェーションだろ? 」
多分、ヤツは、ナニが何だか分からん状態に陥るだろう。 パチンコしていたはずだったんだからな。 美津子先生も、いきなりトイレの中にいた記憶から、説教中の状態へとジャンプするわけだから、少々、戸惑うかもな。 しかも、昨日のイベントの記憶もプラスされるから・・ 一瞬、気が動転するかも。 まあ、今日も健一を呼んで、お説教したと判断してもらおう。 記憶が曖昧で、つながらない所も出て来るだろうが、多分、大丈夫だろう。 健一は、アホだから、そのまま鵜呑みだ。
「 さあ、やってもらおうか、サバラス・・・! これで、最後にしてくれよ? 」
僕は、サバラスに言った。
電子手帳を操作していたサバラスが、チラッとこちらを見て、答えた。
「 当然だ。 これ以上の、ゴタゴタは沢山だ 」
・・・てンめぇ~・・! 相変わらず見下げたような、ムカつく言い方するじゃねえか。 おお? 何様のつもりだ、コラ。 ノックしてやろうか? コッチは、被害者なんだぞ? 立場、分かってんのか、お前。
電子手帳をしまい、サバラスが言った。
「 よし! 準備完了だ。 覚悟は、いいかね? 」
・・・ナンの覚悟だ? おい。 また失敗して、今度は犬だったら、食い殺してやるからな・・・! アメーバだったら、てめえの体の中に侵入して、細胞を破壊してやる。
サバラスが言った。
「 1分前! 」
かすみが、胸の前で手を組み、祈るようにしながら言った。
「 お願い・・ 戻って来て、みちる・・・! 」
すべては、その、あぶらすまし野郎に言ってくれ。 僕の力では、どうにもならん。
星野が言った。
「 象や鯨には、なるなよ? せめて、この部屋に入り切る大きさで、勘弁してくれ 」
ははは・・・ 凄いね、そりゃ・・・ ゴキブリになっても、殺虫剤をかけないでね? 飛んじゃうよ、僕・・・
サバラスが言った。
「 30秒前! 」
まな板の上の鯉だ。 僕は、静かに時を待った。
「 ・・・ん? ちょっと待ってね 」
サバラスが、慌てて電子手帳を取り出し、ナニやら操作する。
・・・凄っげ~、不安をかき立てるような行動、取るじゃねえか、お前・・・! やめれ、そ~ゆ~の・・・!
「 危ない、危ない、はっはっは! もう心配ない 」
・・・ナニが危ないんだ? 心配するなと言われても、それを信用する要素が、1つも無いぞ?
訴え掛けるように、じっとサバラスを見つめる、僕。 その、殺意を込めたような眼差しから逃れるかのように、サバラスは、僕から視線を外し、言った。
「 改めて、2分前! 」
おいっ! また、増えてんじゃんよっ! お前、テキトー言ってんじゃないのか? ホントに、大丈夫なんだろうな・・・?
「 間違えた。 26・・・ ん~・・ 27秒前! 」
・・・その、ビミョーな数字は、ナンだ? 取って付けたようじゃないか。 僕、やめようかな・・・?
「 5秒前! 」
・・・おいっ! イキナリ、5秒まで飛ぶんかよっ! 間はどうした、間は! お前、マジメに数えてるか? なあ? 急速に、不安が高まって来たぞ・・・!
「 ・・・・・ 」
「 5秒前! 」
なっ・・? 止まってんじゃねえか、おいっ!
チラリと、電子手帳を見るサバラス。
「 5秒前! 」
止まっとるっちゅーの、それ。 合計10秒、不明瞭だぞ、おいっ! ・・・やめよう・・! イヤな予感がする・・・!
僕は中止を求め、声を掛けた。
「 サバラス・・ 」
「 ゴオォ~ッ!! 」
また、お構いなしか~っ! この野郎ォ~ッ・・・!
「 ・・・・・ 」
体は、何とも無い。
目の前に、手を組んだままの、かすみがいる。 じっと、僕を見ている。
・・・どうなんだ? 元に戻ったのか? 僕・・・!
星野も、じっと僕を見つめている。
・・・ねえ、どうなの? 僕、元に戻ってる・・・?
星野が、ぼそっ、と言った。
「 ・・・お前・・・ 誰だ? 」
「 ! 」
星野が、知らないっ・・? そんな・・ そんなぁ~ッ・・!
胸で、手を組んでいたかすみは、ゆっくりと手を上げると、口を押さえ、驚愕の表情で言った。
「 ・・そんな・・・ 」
な・・ 何? 何っ? そんなに、ヒドイの? 僕。
僕は、自分が着ている服装を見た。
・・・ジャージだ。 と言う事は、人間だ。 とりあえず、安心した。
サバラスを振り返る。 ヤツは、妙にアセっている。
「 ・・え~・・ え~と・・ やあ? 元気? 」
先回と、同様のうろたえようだな? キサマ・・・!
僕は、星野の執務机の引出しから、手鏡を出した。
サバラスが言う。
「 ・・あ・・ え~と・・ 見るのかな? 見るのかな~・・・? 」
当然だろ、ボケ。 見たくはないが、見なくてはならない。 多分、恐ろしい事になっているようだ・・・!
僕は、手鏡を見た。
そこには、あのヒゲ親父が映っていた・・・
「 ・・・・・ 」
手鏡を持つ手を、プルプルと震わす、僕。
サバラスが言った。
「 え~・・ 次回は、また明日という事で・・・ だめ・・・? 」
・・・やはり、やめておけば良かった。 よりによって、ヒゲ親父だとォ~・・・? 確か今度の日曜は、ウチの母親との結婚式のはずだ。 ヘタすると、自分の母親との結婚式を体験する事になっちまう・・・!
僕は、震える手で手鏡を執務机の上にコトリと置くと、サバラスを振り向き、あのダミ声で叫んだ。
「 やりやがったなあァ~ッ、サバラスぅ~ッ・・! すぐに、元に戻せッ! 今すぐだ、ゴルアァァ~ッ! 」
〔 おじゃまんげ! ・ 完 〕
最後までお読み頂き、ありがとうございます☆
このストーリーには続編がありますが、読んでみたい方はメッセージを下さい。
反響が多いようなら掲載しようかと。
宜しければ、またお付き合い下さいね! 夏川 俊




