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おじゃまんげ!  作者: 夏川 俊
21/28

21、ヤドカリ

21、ヤドカリ



 危機は、去った。


 武蔵野明陵 鬼龍会は、その存在を確固たるものにし、近隣の不良グループは元より、各校の一般生徒たちにまで、その名声は広がった。

「 あの、仙道寺の解散には、やはり、星野が絡んでいたそうだぞ・・・! 」

 広がったウワサにより、別名『 鉄パイプの星野 』の称号は、揺るがないものとなった。 それに伴い、仙道寺の新総長 かすみの名も、鮮烈にヤンキー人気ランキングの上位を駆け上がって行った。 今や、時の人である。

 星野と僕( かすみ )が街を歩いていると、振り返る者が、かなりいる。

「 見ろ、見ろ・・! 星野だぞ・・! 」

「 一緒に歩いてンのは、仙道寺の新総長、星川 かすみだ・・・! 」

「 あれが、そうなのか・・・! 」

 中には、サインや握手を求めて来る者まで出て来た。 ここまで来ると、異常だ。 特に、かすみは、女生徒にも人気があった。

「 かすみ様ぁ~! 」

「 カワイイ~っ! 一緒に写真撮らせてェ~っ! 」

 携帯やスマホを持った、グルービーな連中が殺到する。

 ええい、君たち。 じゃれつくんじゃないっ! 肖像権は、コッチにあるんだぞ!

 ・・・しかし、まあ、平和なのは良い事だ。 後は、元に戻るだけだ。 そこが、一番、不安でもあるが・・・?


 今日は、僕とかすみが、めでたく元に戻る日だ。 この日を、どれだけ心待ちにした事か。 早く、男としての自分の手で、かすみを抱きしめてやりたい・・・!


「 あと、2分で始まる。 良いかね? 」

 サバラスが言った。

 部員を締め出した、星野の執務室。 厚意で、星野が提供してくれたのだ。 他地区の情報連絡会議と称して・・・

 星野が、サバラスに言った。

「 また、あたしも巻き込まれるという事は無いだろうな? 」

 サバラスが答える。

「 勘弁してくれたまえ。 記憶操作に、どれだけ労力を費やすと思っているのかね? 」

 ・・・全部、お前が、勝手にミスっただけじゃねえか。

 かすみが、不安そうに言った。

「 ホントに大丈夫? 」

 サバラスが、腕を後ろに組み、エラそうに言った。

「 総長たる者が、そんな弱気では、困りますなあ・・・! まあ、大船に乗った気で、いてくれたまえ 」

 ・・・その大船に、いつも穴が開いてんじゃねえか、てめえ。

 僕が言った。

「 今度こそ、頼むぜ? ホントに 」

「 黙って、待っとれや、おメーはよ。 ああ? 」

 ・・・てっ・・ めええェ~・・! ナンで僕にだけ、見下した言い方しやがんだ? コラ。 一番、被害を被ってんのは、僕なんだぞ? 分かってんのか、あぶらすまし・・・!

 サバラスが言った。

「 あと1分 」

「 ・・・・・ 」

「 間違えた、あと20秒 」

 ・・・おいっ! ナンで、秒読みなんぞ間違えんだよっ! ホントに大丈夫か?!

「 あと、25秒 」

 ・・・増えてんじゃんよ! ちゃんと数えてんのか? お前。

「 ん? ちょっと待ってね・・・? 」

 電子手帳のようなものを出し、操作するサバラス。 イヤな予感。

「 ・・・え~、あと半日 」

 殺したるわ、てめえっ!!

「 ごめん、間違えた。 明日だった! あっはっはっは! 」

 僕は、サバラスを摘み上げると、プルプル震えながら言った。

「 ・・おちょくっとるんか? タコ助・・・! 明日だと? お? コラ 」

 サバラスは、僕の顔を指差し、かすみの方を見て言った。

「 怒った顔も可愛いね? かすみクン 」

「 ありがとう・・・ 」

 照れる、かすみ。 星野が、プッと吹き出して言った。

「 相変わらずだな、サバラス 」

 頭をかきながら、サバラスが星野に答えた。

「 いやあ~、マックの味には、勝てませんなあ~ 」

 ・・・また、会話が意味不明だわ、お前・・・! ついでに、意識不明にしてやろうか? おお? 最悪、かすみの体なら諦めもつく。 開き直っても良いんだぞ? 変態キューピー人形・・・! 剥製にして、博物館に売り飛ばしてやろうか?

 その時、星野の机の上の電話が鳴った。

「 もしもし? 」

 電話に出るサバラス。 そんなモンに、お前が出るな!

「 あっそう、分かった。 んじゃね 」

 受話器を置くサバラス。

 ・・ナニを、了解してんだ? お前は。

「 本部からの連絡だ。 やっぱ、あと15秒である 」

 いつの間に地球侵略しとるんだ、お前ら・・・! 本部なんぞ、ドコに建てた? しかも、NTTの回線を保有しとるとは、どういう事だ。

 僕は言った。

「 15日の、間違いじゃないだろうな・・・? 」

 掴んでいたサバラスを放すと、ヤツは机の上に、ちょこんと座り、言った。

「 そんな、単純な間違いを、するワケないじゃん 」

 さっき、20秒を1分と間違えたじゃないか、てめえっ! あっけらかんと、言ってんじゃねえよ!

「 あと、5秒! 3、2、1・・ ごおォォーッ! 」


   「 ・・・・・ 」


 目の前に、かすみが立っている。 僕は、学生服を着ていた。

 ・・・成功だっ・・・!

 かすみも、自分の姿を確認する為、着ている制服や腕などを見渡している。

 そんな事しなくてもいいよ、かすみ! 僕が、見てる。 かすみだ! 良かったね! これで、元通りだ・・・!

 自分に戻った事を確認し、嬉しそうな表情のかすみ。 僕に、満面な笑顔を見せる。 しかし、その顔は、次第に驚愕の表情に変わって行く。

 ・・・どしたの? 僕・・ 何か、ヘン?

 かすみが言った。

「 みちる・・・! 」

 僕を指す、かすみの指が、震えている。

 何、何? 何か、おかしいの?

 星野が言った。

「 ・・・お前は・・・! 」

「 ナンだ? どうしたんだ? オレ、おかしいのか・・・? 」

 ・・・この声・・! まさか・・・!

 僕は、星野の机の引出しを開け、手鏡を出した。 恐る恐る、覗き込む。


    鏡には、健一が映っていた・・・


「 ・・・・・ 」

 僕は、机の上のサバラスを見た。 ナニやら、必死に電子手帳を検索しているサバラス。 僕の『 殺気 』に気付いたのか、ふと目線だけをチラリと、こちらに向けた。

「 ・・・やあ・・ 星川クン・・・ 元気? やっほう~・・・? 」

 僕は、サバラスの手から、すっと電子手帳を取り上げ、そのまま静かに、後ろに投げ捨てた。 妙~な脂汗を、額に浮かせているサバラス。

 僕は叫んだ。

「 やァ~りやがったな、テメエーッ!! よりによって、健一だとおォ~ッ? 」

 ああ・・ 声まで、あのアホ健だ・・・

 サバラスが釈明する。

「 いやあ~、おかしいな? プログラムが交錯したかな? ん~、ん~・・・ んん~・・? 」

 ・・消えるなよ? 消えるなよ、てめえっ・・! きっ・・


    ・・・消えた・・・


 僕は、机に両腕をつき、大きなタメ息と共に、落胆した。

 ・・・どうしてくれよう? やはり、意識不明にしてやるか? いや、そんなんじゃ、元に戻れない。 ヤルなら、戻ってからだ。 ヤツを生かしておくと、人類に破滅をもたらす。

 とりあえず、どうする・・・? 探偵を雇って、さっきの電話の着信記録を逆探知し、住所を調べて、カチ込むか? ・・いや、そんな金は無い。

 星野が言った。

「 とりあえず、健一と連絡を取れ、星川。 ヤツがうろたえて、何か、しでかす前に・・・! 」

 確かにそうだ。 それに、鬼龍会と何ら関係意の無い健一が、部室にいるのもヤバイ。

 僕は、かすみと共に、校舎から出た。


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