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おじゃまんげ!  作者: 夏川 俊
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17、待ち伏せ

17、待ち伏せ



「 常盤で、クーデターだ! 」

「 幹部全員、病院送りだそうだぞ! 」

 その日の内に、ウワサは、物凄い勢いで広まった。 おばさんネットワーク以上の浸透力だ。

「 鬼龍会の星野が、助っ人に来たらしい 」

「 狂犬マサも、いたらしいな! 」

 当然、ウワサは、仙道寺まで届いている事だろう。 これで連中も、そう大きな顔は出来ないはずだ。

「 星川は、鉄パイプ1本で、常盤の護衛20人以上を、半殺しにしたらしい・・・! 」

 ・・・おい、ちょっと違うぞ?

「 星川の鉄パイプは、仕込み杖みたいになっていて、伸びるらしいぞ! 」

 違うっちゅ~に!

「 先端から、弾が出るんだとよ・・・! 」

 やめんか、おいっ! 007の、秘密小道具じゃあるまいし、そんなん作れるか! サブが本気にして、既成事実の為に作っちまったら、どうすんだよっ! スタンガン付きとかよ・・・! まあ、アイツなら、製造中に感電するだろうから、心配ないだろうケド・・・


 翌日。

 いよいよ明日は、元の体に戻れる。 野郎が、ちゃんと約束を守ったらの話しだけど・・・

 僕は、例のゲームセンターで、星野と会っていた。

「 昨日は、ご苦労だったな、星川 」

 星野が買って来てくれたジンジャエールのプルトップを開けながら、僕は答えた。

「 ・・サンキュー。 たまたま、運がよかったんだ。 応援に駆け付けた時に、常盤の新手が現れた時にゃ、ビビったぜ 」

 ジンジャエールを一口飲むと、星野が言った。

「 明日は、元に戻れるか・・・ 色々、迷惑掛けたな。 すまん 」

 軽く、一礼する星野。

 手にした缶をテーブルに置き、僕は答えた。

「 まあ、いい経験させてもらったとでも言おうか。 もう、ゴメンだけどな・・・! 」

「 最初は、頼りない男だとは思ったが・・ なかなかヤルじゃないか、お前。 見直したよ 」

「 だから、偶然だって・・・! あんま、買い被るなよ? 最初の印象が、大体、当たってるよ 」

 缶に手を伸ばし、一笑しながら僕は、再びジンジャエールを飲んだ。

 星野が言った。

「 かすみも、その辺りを見定めて、お前と付き合っているんだろうな。 賢い、良い子だ。 大事にするんだぞ? 」

「 分かってるよ、そんなん・・・! 僕にゃ、過ぎた子だ 」

 星野は、じっと僕を見ながら言った。

「 ・・・もし、かすみと破綻が生じたら・・・ あたしと、付き合わないか? 」

 ブッと、吹き出す僕。

 星野は、真面目な表情で、僕を見つめている。 ・・・見つめているのは、僕の顔だ。 気色悪い。

「 じ・・ 冗談だろ? 星野 」

「 本気だ 」

 確かに星野は、ルックス的には、申し分ない。 ハッキリ言って、美人だと思う。 勝気で、少々、キツイ印象は受けるが、女性としての恥じらいも持っている。 しかし・・・

 やはり、無く子も黙る、鬼龍会の会頭だ。 僕とは、完全に不釣合いだろう。 僕には、会頭の彼氏としての、品位も品格も無い。 抗争グループに狙われる可能性もあるし、星野の活動の、邪魔になるのが関の山だ。 されど・・・

 星野は意外に、尽くしてくれそうなタイプかもしれん。 う~ん・・ 一考の余地は・・・・

 ・・イカンッ! ナニ考えてんだ、僕はっ! 僕には、かすみがいるじゃないか! あんな、イイ子を差し置いて、星野と・・・!

「 かすみの、次でいいよ、あたしは。 その時、あんたが良ければ、でね・・・ 」

 ・・・ブックマーク、付けさせて頂いときます。

 星野は、それきり黙った。

 こうしてると、フツーの子と変わらない。 まあ、実際、目の前に座ってるのは、僕なんだケド・・・

鬼龍会 会頭から、告られたなんて、ある意味、名誉だ。 誰にも言えないトコが、辛いが・・・


 店を出た星野が、歩きながら言った。

「 仙道寺とは、あんたが提案した通り、平和的に解決していこうと思う。 流血は、避けるのが一番だしな 」

「 いいんじゃない? そうしてくれよ。 仙道寺との対決が終息すれば、ここいらも平和になるね 」

「 正木の具合は、どうだ? 」

「 あばらに、ヒビが入ってるらしい。 骨折は、していないようだ。 これから僕、見舞いに行こうと思うんだけど、行くか? 」

「 ああ。 同行させてもらおうか 」

 大通りから、路地裏へ入る。 小さなスナックや居酒屋などが、こじんまりと軒を連ねている。 まだ昼間なので、開店はしていない。 人通りは少なく、野良猫が、残飯をあさっていた。

 後ろから近付く、人の気配。

「 ? 」

 振り向くと、そこには、学生服を着た数人の男たちがいた。

「 ! 」

 突然、ナイフを出し、男たちが切り付けて来た!

「 危ないっ・・! 」

 ナイフの刃先が、僕の髪を数センチ、切り落とした。 次の男が、襲い掛かって来る! 僕は、とっさに足を出し、男の腹を蹴り飛ばした。

『 人間の足はね、腕より長いのさ。 刃物持った相手に対して、それを奪い取ろうと思ったら、ケガするよ? それより、距離を保って、足をつかうのさ 』

 母の言葉が、脳裏を横切り、それを実行した僕。

( 感謝するぜ、おふくろ・・! 偶然だが、入った )

 相手は3人。 その内、背の高い茶髪の男が、言った。

「 星川・・・! 最近、随分と、ハデに踊ってくれてんじゃねえか、ああ? 今日も、情報屋と打ち合わせか? 」

 違います。 さっき、ゲーセンで、ジンジャエール頂いてたの、僕。 そんでもって、告られたりして。 ははは。

 ・・・そんな、悠長な会話に、乗って来そうな雰囲気の男たちではない。

 背の高い男は、続けた。

「 今日は、鉄パイプ、持ってねえのか? 」

 あったら、もう振り回してます。 当たっても知らんよ~、とか言って・・・

 男は言った。

「 2人とも、ここで死ね・・・! 」

 全員が、ナイフを取り出す。

 ・・・よく切れて、痛そうだね、それ。

 星野が言った。

「 海南・常盤とヤラれて、居場所を失ったか? 神岡・・・ 」

 神岡? そうか、コイツが、仙道寺の神岡か・・・! どうりで、物騒な顔してるわ。 ウチのマサの方が、もっとコワイけど。

 神岡が、星野の方を見て言った。

「 情報屋のクセしやがって、オレを呼び捨てにすんじゃねえ! ブッ殺すぞ、てめえっ! 」

 ブッ殺さない選択肢が、あんの? アンタ、さっき、死ねって言ったじゃん。 2回も脅すと、ドスが効かないよ?

 反対側から、足音が聞こえて来る。

「 ? 」

 何と、5人の男たちが、近寄って来た・・・! 皆、一癖ありそうな顔立ちで、これまた、全員がナイフ持参である。 細い路地で、挟み撃ちだ・・・! ヤバイ。

 神岡が言った。

「 星川。 てめえは、オレの女にしてやろうかと思ったが、ハデにやり過ぎたな。 死んでもらうぞ 」

 路地の両脇には、更に細い路地があった。

 ・・・ここは、逃げるが勝ちだ!

 星野を見ると、向こうもその考えらしく、目が合った。 次の瞬間、僕は右の路地へ、星野は左の路地へと走り出した。

「 野郎っ! 逃がすか、追えっ! 」

 置いてあったゴミ箱をひっくり返しながら、僕は走った。

「 待ちやがれ、星川ァッ! 」

 そう言われて、はいそうですか、と待つボケがおるか! 全力疾走で、逃げたるわっ!

 壁に吊るしてあったプランターや、隅に置いてあったビールケースなどをぶちまけ、僕は走った。

「 ・・うわ、痛っ! 」

「 どけッ、何してんだ! 」

 後ろの方で、叫ぶ声がする。 チラッ、と振り返ると、神岡以下、4~5人が追って来る。

 捕まったら、アウトだ。 強姦され、殺される・・・! 男なのに、強姦されてたまるか! そんな思い出、絶対に要らんわ!

 僕は、必死で走った。 幸い、路地は細く、網の目のように交差している。

 僕は、そこいら中にあった、ありとあらゆるモノをカンペキにぶちまけ、路地を曲がり、逃走を図った。


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