嗚呼、面接 2
「二十人。キリが良いわね。まぁこの中にまだまぐれが隠れていると思うけど、先に言っちゃうね。欲しいのは四人。誰が残るのかな?」
一人ひとりに目線を向けて、嬉しそうに話している。
「じゃあ次、十人、着いて来て」
女性は、奥にある扉に初めに並んでいた十人を、連れて行った。
「なぁ、おい」
「え?」
僕より後に入ってきた男が声をかけてきた。
「この会社、変じゃないか?」
「変?」
「だってよ。面接官…まぁ面接じゃなかったけど、アイツ一人だけだぜ。他のヤツは働いてねーのかよ。それになんでじゃんけんだ?ITの会社って聞いてたよな?」
「へ?そうなの?」
「なんでしらねーんだよ。書いてあっただろうが」
男は目を丸くして、僕を見てきた。が、知らないモノは知らない。
内容を見れば、出来ないとかやりたくないとか、そんな気持ちが先行してしまいそうで、入社してから、仕方がないかの気持ちでやろうと思っていた。
「ITって聞いたから来たのによ。パソコンひとつ見つからねぇ。理工学部が泣くぜ」
もう興味の無い話になってしまったので、隣の男に適当に相槌をしながら、隣の部屋で何が行われているのかを考えた。
瞬発力がどうとか、反復横とびでもしているのだろうか?
「なんだよ全く」
十人が入ったドアが開き、その内、六人が出てきた。が、そのまま何も言わずに帰路を辿って行った。
「次の十人入って」
僕達がぞろぞろと移動すると、ゲームセンターにあるようなシューティングゲームが十台、狭い部屋にキュウキュウに詰め込まれていた。
「はい、じゃあ今から十分。このゲームやってね。よーい、スタート」
僕達はあわてて、ゲーム機の前に立った。
ゲームセンターはあまり行かなくて、こういうのは正直いって不向きだ。画面ではおびただしい数のゾンビがうごめいている。トリガーを引くだけのゲームなのに、全く標的に当たらない。何が計られるかわからないけど、たぶん、落ちたな。右下のポイントが少しも増えていない。隣の理工学部は、楽しそうに奇声を発している。
開始から五分が過ぎた頃、突然画面の横からゾンビの顔が出てきた。
「うわっ」
体をのけ反らすと、ゲーム内の僕の分身も動いた。どうやら足元のマット上で動くと僕の分身も動くらしい、そろそろ体力もピンチなので、逃げ回る事にした。
残り二分。たいしてゾンビを倒せず、逃げ回っていると、いきなり画面が暗くなった。
「え?嘘?壊しちゃったの?」
どれだけトリガーを引こうが、マットを踏もうが、画面は暗いままだ。
画面が戻ったと思うと、画面上に「bonus stage」と書かれており、動かないゾンビがたくさんいた。
さすがの僕でも動かない標的には当てられるようだ。残り何十秒の間に、必死にトリガーを引いていた。
「はい、終わり」
女性の声とともに、ゲームからゲームオーバーと聞こえた。
女性はひとりずつの画面を見て回りながらニヤニヤしている。
「えっと、君と君と、君。お疲れ様でした」
理由はわからないが僕は、指さされなかった。ちなみに理工学部も。
「なんでだよ?俺のポイント見てるか?六万ポイントだぞ」
僕が自分の画面に一瞥やると、二万ポイントしかなかった。
「六万ポイントなんて、ちょっとすごいだけじゃない。この子なんか十二万ポイントよ」
十分間でどの程度のポイントが獲れるかわからないが、皆は指さされた理工学部を唖然と見ていた。
「だいたい、誰がポイント上位者を選ぶって言った?そんな雑魚をちまちま倒して威張らないで。私が見てたのは、ボスを見つけたか?大物狙いって当たり前でしょ?まぁ、十二万ポイントは、例外だけど。あと、ノーダメージの子とか、そうねぇ、ボーナスステージを見つけるなんて大したものだわ。秘密基地を見つけるようなものだから。とにかくあんた達三人は、死んだり、雑魚を倒すのに必死な凡人って事。わかったら帰って」
三人は、顔を真っ赤にして、部屋を出て行った。