キラキラにんじゃ・ハルカ
※冬の童話祭2026・テーマ「きらきら」参加作です。
キラキラが好きな小学生の女の子が、実は忍者の末裔で……?
ハートしゅりけん! 七色けむり玉!
キラキラ忍術で事件を解決!
「かわいいなあ……。」
ハルカはショッピングモールのファンシーグッズうりばで、目をかがやかせていました。
キラキラ光るペンケースや、ほうせきの形をしたネイルシール、ハートがたのバッジなどが、たなにならんでいます。
おこづかいをもらったので、買い物にきたのです。
「どれにしよっかな……?」
そのとき、大きなこえがしました。
「まんびきーっ!」
見ると、こうこうせいくらいの男の人が、ゲームソフトをもって、走っています。おもちゃコーナーのおねえさんが、おいかけています。
ハルカは目がキリッとなりました。
物かげにいどうすると、いっしゅんで、にんじゃのすがたにへんしん!
でも、いしょうの生地はピンクで、全体にラメが入っています。
ずきんのおでこには、ハートマークのししゅう。
こしのおびには、たくさんのスパンコール。
ハルカは、風のように走り、まんびきはんの前に回りこみました。
はんにんは、あっけにとられました。
「……な、なんだ。おまえ?」
「キラキラにんじゃ。ハルカ!」
「……ああ? どけっ!」
まんびきはんは、つっこんできました。
ハルカは、後ろへジャンプしながら、
「ハートしゅりけん!」
と、しゅりけんを数まいなげました。赤いハートの形をしています。
「うわっ!」
まんびきはんはハートしゅりけんに足をはらわれて、ごろんごろん。
そこへ、けいびいんがかけつけて、その男をつかまえました。
てんいんがハルカに頭を下げます。
「たすかりました。ありがとう!」
まわりの人たちも、「すごーい。」と、はくしゅをしています。
ハルカは、手をふってこたえたあと、玉をゆかにたたきつけました。
七色のけむりがボワン!
ハルカのすがたは消えました。
女の子たちが「かっこいい!」、「ステキー!」と、こえをあげました。
ばんごはんのとき。
ハルカは家ぞくに今日のかつやくを話しました。
「でね、みんなよろこんでくれてね……。」
そのとき、「ふん!」と、はないき。
長いまゆげにするどい目の……しげぞうおじいちゃんです。
「くだらん。ヒーローきどりか。にんじゃというのはな、かげに身をおくものだ。」
おじいちゃんは、もういちどはないき。
「にんじゅつは、そんなことのために使うものではない!」
ハルカは、口をとがらせました。
「じゃあ、なんのために使うの?」
「それはもちろん、とのさまのおやくに立てるようにだな……。」
「今どき、とのさまなんていないよ!」
「う、うるさい。それなら、もしかしたら、知事や市長からたのみが……。」
「あたしは、みんなのやくに立ちたいの。それに、キラキラのにんじゅつでよろこんでもらえれば、なおいいでしょ?」
「だいたい、そのキラキラにんじゅつというのも気にくわん。そんなものを勝手につくりおって。」
パパが間に入りました。
「まあまあ。にんじゃの話なんか、もういいじゃないか。ねえ、ママ?」
「そうねえ。それにしても、うちってにんじゃの家なの? みんな、よくにんじゅつの話とかするけど……。」
ママはおっとりとしたちょうしで、とぼけたことを言います。
そんな二人のことは気にせず、ハルカとおじいちゃんは、にらみあったまま。
「とにかく……。ハルカ、おまえは、外でにんじゅつを使うのは、きんしだ。」
「え……?」
「頭をひやせ。」
そう言うと、すわったままシュッ! といっしゅんで、すがたを消しました。
けむり玉も使わずに、見事なくもがくれのじゅつです。
次の日。ハルカは下校中も、ふくれっつらをしていました。きのうのことで、気持ちがおさまらなかったのです。
たしかに、おじいちゃんの言うこともわかります。
ハルカの家は、せんぞだいだい、にんじゃです。あとつぎをのこさないといけません。
でも、パパは、にんじゃになるのがいやで、サラリーマンをしています。
ママはきょうみがなさすぎて、にんじゃの家だということもよくわかっていません。
それで、おじいちゃんは、ねっしんにハルカをきょういくするのです。ハルカは三年生ですが、三才のころからみっちりしどうをうけています。
さいわい、ハルカはにんじゃのしゅぎょうがすきです。そしつもあります。
「でも、もっとかわいく、クールにいきたいんだよなあ……。」
土手をすすんでいると、川べで、おもちゃのドローンが飛んでいました。
が、風にあおられて、川にポチャ。
コントローラーを持った女の子が、
「あー、うそーっ。」
と、あわてています。
ハルカは、木のかげにうつると、キラキラにんじゃにへんしんです。
そして、川べまで行って、ジャンプ。
「キラキラ水ぐものじゅつ!」
りょう足のうらにボン! と、うきわがあらわれました。
キラキラにデコレーションされた花がらのうきわで、水めんをすべります。
「わあっ、すごーい!」
ドローンの持ちぬしの女の子が、こえをあげました。
ハルカは、うかんでいるおもちゃのドローンをひろおうとしました。
そのときです。
なにかが飛んできて、右足のうきわにささりました。
黒いしゅりけんです。
うきわから、空気がシュー……。
「ああっ……!」
左足でふんばって、手で水をかき、なんとかきしまで。
ドローンは、ながされてしまいました。
「あー、そんな……。」
女の子がかたを落としました。
ハルカは、しゅりけんが飛んできたほうをキッとにらみました。
人かげは、ありません。
家に帰ると、ハルカはドカドカと、おじいちゃんのへやに入りました。
「おじいちゃん、ひどい! どうして、あんなことしたの!」
「にんじゅつは、きんしと言っただろう。」
「でも、あの子、かわいそうじゃん!」
おじいちゃんは、ためいきをつきました。
「なんどいえば、わかる? にんじゃは、目立つものではない。ひっそりと、かげに身をおく。それが、しのびの道だ。」
ハルカは、わなわなとふるえています。
「わしらは、でんとうのにんじゅつを守りながらだな……。」
ハルカは、言葉をさえぎって、
「そんなの……やだ!」
と、大ごえをあげました。
おじいちゃんは、しばらくだまりました。
「……よし。そこまで言うなら、すきににんじゅつを使ってよい。」
「……ホント?」
「ただ、じょうけんがある。わしににんじゅつで勝ったら、だ。」
「え……。」
「それなら、みとめてやろう。」
おじいちゃんは、かなりのじつりょくしゃです。おそらく、勝てないでしょう。
……でも、ハルカもさいきん、うでをあげています。じしんもついています。
がんばれば、勝てるかもしれません。
それに、キラキラにんじゅつをじゆうに使うことができたら……。
かんがえると、わくわくしてきます。
「……わかった。うけてたつよ!」
ばんごはんのあと。
近くの林にある神社で、にんじゃすがたのハルカとおじいちゃんが、むきあいました。
パパとママも見守っています。
この神社はぼろぼろで、人がきません。ハルカはいつもここで、おじいちゃんに手ほどきをうけているのです。
「ルールはかんたん。にんじゅつで、パパとママにすごいと思わせたほうが勝ちだ。」
「うん。じゃあ、あたしからいくよ!」
ハルカは、一歩前に出ました。
「キラキラ分身のじゅつ!」
ハルカの体がパッと光ると、三人の分身があらわれました。
しかも、それぞれ、キラキラと光るかざりがついたドレスやワンピース、ニットセーターを着ています。
いつのまにかライトもおいてあり、みんなファッションショーのようにポーズ。
パパが目を丸くしました。
「やるなあ、ハルカ。」
「どんなタネかしら?」
ママは手品だと、思っているようです。
「では、わしのばんだ。」
おじいちゃんは、まきものをりょう手でにぎりました。
「口よせのじゅつ!」
すると、空気がゆれて、おじいちゃんの後ろに白いきりがたちました。
きりの中に、なにやらかげが……。
ぎろりと光る大きな目。
木のように太い手。
そして、ぬるりとしめったひふ。
きょだいな、ガマガエルです。
「ゲロォォ!」
「わ、わわっ!」
ハルカは、思わず、後ずさり。
「ひえええ!」
パパも、こしをぬかしました。
ママは、ポカンと口を開けました。
「フフフ……。どうだ? このおそろしい顔でにらまれたら、おにもふるえあがるぞ。」
おじいちゃんは、むねをはりました。
「これは、じいじのほうが、すご……。」
パパが言いかけた、そのときです。
「ゲロォォ!」
ガマガエルが、その場ではねました。
ドシンドシンと、地面がゆれます。
「お、おいガマ。どうした? しずまれ。」
「ゲロォォォォ!」
いきおいよく、舌をのばしてきました。
おじいちゃんが、ふっとばされました。
「ぐあっ!」
「おじいちゃん!」
おじいちゃんは、こしをおさえて、起きあがれません。
「ま、まずい……。気が立っておる。」
ガマは、おじいちゃんに歩みよります。
「ゲロォォォォォ!」
そのとき、ハルカは、目がキリっとなり、
「ハートしゅりけん!」
ハートがたのしゅりけんをなげました。
「ゲロォ……!」
「こっちだよ!」
たすけるため、注意を引きつけます。
ガマが、ねらいをハルカにかえます。
「ハルカ、なにを……。にげろ!」
おじいちゃんが、さけびました。
パパは、「あわわ。」と、おろおろ。ママは、「ゆめかしら?」と、首をかしげています。
「ゲロォォ!」
長い舌がのびてきました。
ハルカは、ジャンプしてよけましたが、れんぞくでのびてきて、体をかすめ、
「うわっ!」
ゴロゴロと地面をころげました。
下がろうとしましたが、せなかには神社のかべが。
ガマガエルが、じりじりせまってきます。
「ゲロォォォ!」
月明りに、ガマガエルの顔がくっきりとてらされています。
そのとき、ガマの顔をはっきりと見たハルカは、ハッとしました。
ふくろを取り出し、なげました。
「たあっ!」
ガマガエルの顔に、白いこながふりかかります。
「ゲロォッ……?」
ハルカは、たかくジャンプしました。
さらに、赤や銀色のこなをふりかけました。
ガマガエルのほおやまぶたが、カラフルに……メイクされていきます。
着地したハルカは、つづけて、
「キラキラかとんのじゅつ!」
たかだかと手をかざしました。
空中ではじける光。赤やピンク、黄色の花火です。
ガマガエルのまわりをいろどります。
「ゲロォ……。」
顔がおだやかになってきました。
ガマは、近くのいけをのぞきこみました。水面にうつる自分のすがたを見て、うれしそうにわらいました。
「ゲロロ、ゲロロ。」
「ど、どういうことだ……?」
おじいちゃんが、こえをもらしました。
「このガマガエル、女の子なの。」
「なっ……?」
「だから、メイクして、キラキラにしてあげたの。すごく、よろこんでるでしょ?」
ハルカは立ち上がろうとするおじいちゃんをささえました。
「顔がこわいとか言われて、おこったんだよ。女の子なら、いやがるよ。」
おじいちゃんは口が開いたまま。パパとママは、目が点になっています。
「……そうだったのか。わしもしゅぎょうがたりんな。」
おじいちゃんは、ずきんを取りました。
「ハルカ、わしの負けじゃ。」
「え……。」
「キラキラにんじゅつ……見上げたものだ。ひどいことを言って、わるかったな。」
「……いいんだよ。てゆーか、おじいちゃんから、きそを教わってるおかげだし。」
「ハルカ……。」
「いつも、手ほどきありがとう。」
パパとママも歩みよりました。
「にんじゃって、わるくないかもな……。」
「そうねえ。それにしても、二人とも本当ににんじゃだったのね。びっくりしちゃった。」
ハルカたちは、えがおをうかべました。
次の日。
ハルカが学校から帰ってくると、リビングにへんな人かげが。
にんじゃのかっこうですが、いしょうの生地が、ぜんぶ銀色です。
それは、おじいちゃんでした。
「ハルカ、おかえり。」
「ど、どうしたの、そのかっこう?」
「わしも、新しさを取り入れようと思ってな。ギラギラにんじゃだ。どうだ?」
「……おじいちゃん! あたしが、センスをみがくしゅぎょうをしてあげる!」
「む……?」
「今日から、ビシバシいくからね!」
(おわり)




