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ブラックギルドを追放されたおっさんは最強投資家となりギルドを買い取りざまぁする  作者: 芽春誌乃


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このおっさん実は最強投資家

「カレン、お前は今日から俺の専属秘書だ」


 俺の言葉にカレンはただ俺を見つめていた。


 その瞳には、驚きと安堵、あとはほんの少しの戸惑いが入り混じっているように見えた。


(いきなり過ぎたか……?)


 ギルドでのあのひどい仕打ちがすべて終わったのだ。

 そして俺の新たな人生がこの王都で始まる。


 ――――そう実感する俺の隣でカレンは未だに信じられないといった顔でキョロキョロと周りを見渡していた。


「ええ……じ、実感がないです。いきなり秘書なんて。わ、わたしには重い責務です」

「そうか? 君は受付嬢の中でも特に真面目に働いていたから、秘書も十分務まると思うぞ」


 これはお世辞ではない。

 優秀で勤勉なところを見てきたからこそ、俺はカレンを秘書にしたいと考えていた。


「わかりました……わたし、レオンさんのために働きます!」



(自分で誘っておいてなんだが、この子は本当に思い切りがいいな……)



 少ない時間で判断すべきことをしっかりと判断できる。

 それも彼女の優秀さを構成する一要素だ。


「ありがとう。これからよろしく頼む」

「はい!」


 笑顔で応えてくれる彼女を俺は優しくオフィスへと案内した。


「カレン、どうぞ。ここが君のデスクだ」


 俺が案内したのは俺の執務室のすぐ隣にある、広々とした一室だった。

 窓からは王都の街並みが見渡せる。

 高価そうな木材で作られた大きなデスクに座り心地の良さそうな椅子。


 ギルドの事務室とは比べ物にならない豪華な空間にカレンは目を丸くしていた。


「レオンさん……これはわたしのデスクですか?」

「ああ。君の仕事は俺の秘書として俺のスケジュール管理や書類の整理をすることだ。ギルドの事務とは少し違うが君ならすぐに慣れるさ」


 カレンは感極まった表情で俺を見つめてきた。

 その瞳はまるで尊敬の念を抱いているかのようだ。


「はい! レオンさんのためなら、どんなことでも頑張ります!」

「ありがとう。でも、無理はするなよ」


 俺はそう言って、執務室へと戻った。



 ________________________________________



 ――――それからあっという間に一週間が過ぎた。



 この一週間でカレンはすっかり俺の専属秘書としての仕事に慣れてくれたようだ。

 ギルドで働いていたときから優秀だった彼女は俺の仕事を完璧にサポートしてくれた。


 そしてこの一週間で俺は改めて、この投資銀行の頭取としての俺の存在をカレンに思い知らせることになった。


「レオンさま、お疲れさまでございます」

「ギルドにいるとき、お怪我はありませんでしたか? ギルドなどという危険な場所で、心配しておりました」

「レオンさまがいらっしゃらない間、わたくしたちは寂しくて……」


 執務室に戻ると毎度のごとく若い女性行員たちが俺を囲んで迎えてくれた。

 彼女たちはみな、才色兼備の美人ばかりだ。

 中にはわざと胸を俺の腕に押しつけてくる者までいた。


「やれやれ困ったものだ」


 そういえば、ギルドではこんなこと一度もなかったな。


 それもそうか。

 ギルドでの俺はしがない管理職。

 怒鳴られ、罵倒されるだけのサンドバックだった。


 だが、この投資銀行では俺は頭取だ。

 みんな、俺の財力と能力を尊敬し、俺に好意を寄せてくれる。

 金目当てで俺自身を見ていない子もいるのはちょっと嫌な気がする……。


 でも、俺の能力を正しく評価してくれる子もいる。



 ――――これが俺の本来の居場所なのだ。



(もう少し早くやめていてもよかったかもな)


「ギルドにいたときの件だが大丈夫だ。なにも問題はないから、君たちは君たちの仕事に戻ってくれ」


 俺はそう言って、彼女たちをなだめた。


「えー、レオンさんともっといたいですー」

「わたし、頭取とお食事でも行きたいなと前から思っておりまして――――」

「頭取は独り身なんですよね。わたし、お嫁さんに立候補しちゃおうかなー」


 しかし、彼女たちは落ち着くどころかヒートアップする。

 すると、その様子を見ていたカレンが真っ赤な顔で俺のところにやってきた。


「あの! レオンさん! もう仕事の時間ですよ!」


 カレンは俺にべったりとくっついている女性行員たちをまるで敵を見るかのような目で睨みつけた。


「な、なんなのあなた?」

「レオンさまのなんなのよ!」


 カレンは強引に俺の腕を引っ張ったのだが、それが原因で少し女性行員たちの機嫌が悪くなる。


(うわー、爆発寸前だー)


「わ、わたしはレオンさんの専属秘書です! あの、仕事の話ならこのわたしを通してからにしてくださいませんか!」


 カレンはそう言って、俺を女性行員たちから完全に引き離した。

 その姿はまるで自分の大切なものを守ろうとする子犬のようだ。


「秘書……なら仕方ないわね」

「秘書になれるくらい優秀な人ならまぁ任せてもいいわね」

「でも、夫人のポジションは譲らないわよ」


 意外にもすんなりと納得してくれた女性行員たち。

 ある程度の分別はつくようだ。


「な、なんか。この人たち嫌です」

「まぁまぁ。落ち着け、カレン」


(可愛いな……)


 俺は頬を膨らませるカレンを見て、思わず笑みがこぼれてしまった。



 ________________________________________



 一方、レオンハルトが去ったあとのギルドではグレッグが頭を抱えていた。


「クソっ! レオンハルトのヤツめ! どうしてくれんだ! カレンもいないし、仕事が全然回らないぞ!」


 グレッグは事務室に山積みにされた書類を見て、そう叫んでいた。


 レオンハルトが事務員として1人で担っていた業務量は膨大なものだった。

 しかし、ギルドの他の事務員たちはレオンハルトが追い出されたことで、その業務量を誰も引き継ごうとしない。


「おい! 誰かレオンハルトの仕事をしろ!」


 グレッグが叫んでも誰も応じない。


「うちはブラックだ。俺はもう仕事しない」

「そうだそうだ! レオンハルトの仕事は多すぎる!」

「引継ぎをする間もなく退職させるなよ!」


 ギルド員たちの不満が爆発した。

 そして、この騒動はギルドの評判をさらに地に落とすことになった。


 依頼の受注はさらに減少し、ギルドはあっという間に多額の負債を抱えることになった。


「このままじゃ……俺のギルドが潰れてしまう……」


 グレッグはそう呟いた。


 プライドの高いグレッグはギルド員たちから非難されることをなによりも恐れた。



 ――――だが、もうどうしようもない。

 ギルドはもう、崩壊寸前だった。



「こうなったら……こうなったら、強いボスモンスターの討伐を計画して、一気に逆転するしかない!」


 グレッグはそう叫んだ。








 しかし、その討伐依頼は準備不足とグレッグの無能な指揮が原因で大失敗に終わった。


 多数のギルド員と冒険者が負傷し、ギルドはさらなる巨額の負債を抱えることになった。

 ――――ギルドは廃業寸前だ。


「どうしよう……どうすればいいんだ……」


 グレッグは誰もいなくなったギルドの事務室でそう呟いた。



 ________________________________________



 俺はカレンとともに王都での新生活を楽しんでいた。


 新しい家はギルドがあった場所とは比べ物にならないほど広くて豪華だった。


「レオンさん、すごいです……!」


 カレンはそう言って、俺の背中に抱きついてきた。


 俺はそんなカレンを優しく抱きしめた。


 もう、あのブラックギルドに戻る必要はない。


 俺にはこの最高の秘書とこの最高の人生があるのだから。


(さて、グレッグは今頃どうしているだろうな)


 気になるところではある。


(そろそろ、融資を求めて銀行にでも来る頃か……)


 俺の予測ではあのギルドの破綻は目前に迫っている。

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