探査記録VOL.7「分裂」
SAIM臨時評議会会議録
記録者:A-02(主任モニター)
B-17(分析官)
C-12(研究主任)
【会議記録 開始】
A-02(主任モニター):
……失踪者は増え続けています。
今月だけで300人以上、累計で600人を超えました。
これ以上の犠牲は許されません!
我々は、静電図書館を「抹消すべきだ」と判断します。
B-17(分析官):
それは……本気で言っているのか?
あそこには、リリアという少女がいる。
彼女は過去にヒトに■■されている。
我々がそれを刺激して反感を買うのも危険なんじゃないか。
それに、空間そのものは知性の集結体であり、記録であり……
C-12(研究主任):
ですが、もはや回復不能な被害が出ています。
今だって失踪者は増え続けています。
そして、それの観測者たちの精神にも明確な異常が……
「図書館」は我々の理解を超えている。
B-17:
だからこそ残すべきだろう!
理解できないからといって、それを消すのか!?
これは安全ではない!
A-02:
「安全ではない」という言葉が通用する段階はとうに過ぎています!
(※このあたりから、会議は次第に激化。
机を叩く音、怒号などが記録に残されている。
およそ3日後、SAIM本部内にて派閥間衝突が発生。
短期間ながら武装暴動が生じ、2名が負傷する事態となった)
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【極秘作戦:波壊計画】
実行日:■■■年■月■日
作戦指揮:A-02
協力部門:SAIM特殊兵器研究局
派遣調査員:C−21983(一部記憶処理済)
装備:脳内装着型・小型波壊爆弾
脳内装着型音声記録装置
目的:〇〇山地より図書館へ侵入し、中心テーブルに到達。
その時点で小型波壊爆弾を作動。
空間中央に置かれた日記を物理的に破壊する。
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【作戦時 通信記録】
A-02:
位置確認、進行せよ。
調査員:
了解。
……現在、長い本棚の廊下を進んでいます。
(数十分後)
奥に……テーブルが見えます。
A-02:
こちらも確認済み。
対象との距離は?
調査員:
あと10メートル……5……
今、テーブルに手を……
(轟音の後に通信が途切れる)
(通信途絶直後、〇〇山地全域に渡る地震が発生。
気象庁観測記録と一致。波壊爆弾起爆が確定)
【作戦終了後】
A-02:
…………爆発を確認。
対象破壊成功だ!
研究室内数名のスタッフ:
やった、やったぞ……!
遂に……!
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【翌朝:ラジオ音声記録】
「こちら○○防異災センター
〇〇山地で、大規模な時空間陥没が発生しました。
現在、調査隊を……」
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【後書き】
記録者:B-17
我々は、やってしまった。
止めることができなかった。
図書館を、消し去った。
今おそらく、我々の中から記憶が消えていっている。
山は崩れ、空間は閉じ、観測もできない。
残ったのは、平地だけ。
それでも、我々はこの記録を残す。
未来の誰かが、この地に触れる前に——
「この場所は、決して研究してはならない」
注意点:本事案で手に入れた
「図書館」についての記録は
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