探査記録VOL.3「接触」
記録者:クラスC調査員(C−4432)
装備:脳内装着型音声記録装置
注意点:この記録は通話ログを文字に起こしたものと思われる
──通話ログ開始──
SAIM(司令部):
聞こえるか?応答しろ。
調査員:
はい、こちらC-4432。音声、届いてます。
SAIM:
よし。例の山道、そこを進んで図書館への侵入を試みろ。
調査員:
了解。これより山に入ります。
(ザザ……ザザザッ)
【数分のノイズと不明瞭な音。周囲の風音と環境音が一変】
調査員:
あれ……ここは……?
SAIM:
……侵入に成功したか?
調査員:
はい。恐らく……
SAIM:
よし、そのまま本棚の通路を進め。指示があるまで記録を継続。
調査員:
了解。
【──約2時間後──】
調査員:
……到着しました。
記録にあった、「テーブルのある空間」です。
周囲には書棚と椅子、光源不明の柔らかい照明。
???:
あら、誰に話しかけているの?
調査員:
……!
【数秒の沈黙】
調査員:
あなたが……リリア、ですか?
リリア:
えぇ、そうよ。よく来てくれたわね。
調査員:
少し、質問してもよろしいでしょうか。
リリア:
いいわよ。おしゃべりは好きなの。
調査員:
最近……私たちの仲間が、ここを訪れませんでしたか?
【短い沈黙】
リリア:
…………
リリア:
もしかして……■■■さん、B-1089のこと?
調査員:
……その通りです。
リリア:
そうね、彼は――
(ザザザザザザ……)
【謎のノイズが入った直後、プツッと接続が切れてしまう】
──通話ログ終了──
補足:
調査員は6時間後、自力で帰還。
しかし、対象空間に侵入した記憶を完全に喪失。
脳内に埋め込まれていた音声記録装置も消失していた。
この事例により、
「空間自体が直接接触した者の記憶や記録を消去する能力を持つ」
可能性が極めて高いと判断された。