プロローグ(下)
...........私は感じていた。
意識が覚醒してゆくのを。
今まで無だった空間を少しつづ色々な物に侵食されている。
まず最初に感じたのは耳。つまり聴覚である。
何かがパチパチと音を出して燃えている。
次に鼻。つまり嗅覚。
焦げ臭い匂いがする。
この時点で触覚が戻っていた。
そして最後に、眼。
目を開いて、そこに映ったものは、
地獄だった。
文字どうり地獄だった。
街は燃え、人の死体がそこらじゅうに転がっている。
何よりも印象に残ったのは、こちらに顔をむけ、醜く笑うその化け物だった。
そうだ....
この死体はきっとこいつらがやったんだ。
逃げなきゃ!
そう思った時にはもう体が動いていた。
今までの人生でこんなに早く走ったことなんて一度もなかった。
だが、今はただ逃げるために走ることに全力を費やした。
「はぁ、はぁ」
汗だくになりながら一度走るのをやめる。
「もうきてない、よね?」
走ってきた方向を見てもあの化け物はいなかった。
「よ、よかったぁ」
自分の安全が確認できた私は今自分や世界がどんな状況なのか調べることにした。
自分はおそらくあの後病院に搬送された。
今着てる服は、病院服だったことからそれは容易に想像できた。
携帯はやはりなかった。
それと、あんなに早く走れるなら、あんまり時間は経ってないと考えることができる。
普通、ずっと寝たきりだった人が全速力で走れるものなのか?と考えたが、
火事場の馬鹿力というものだろうと腑に落ちた。
さて、と。
次はこの世界の状況についてか...
正直なところさっぱり分からない。
さっきまで昏睡?していたから当たり前っちゃ当たり前だが、今の世界がどうなってるかは分からない。
一つわかるのは、この世界は、人間には生きづらく、危険な世界になっていて、あの化け物たちに侵食されているというところだ。
このままだと間違いなく死ぬ。
運よくあの化け物に遭遇しなくても、食力や水分はどうする?
他の人と会えるのか?
避難場所はあるのか?
そもそも人がいるのか。
様々な疑問が頭に浮かんでは不安が募ってゆく。
「クソッ!どうやって生き延びればいいんだよ!」
行き場のない怒りを拳に固め、地面を叩く。
パニック状態だったが、数分後に落ち着きを取り戻した。
今考えると、こんな状況、漫画とかアニメでいっぱい見たな...
もしかしたら!
そんな藁にもすがるような思いで、その言葉を発した。