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聖女アリス、異世界で溺愛されてるけどツッコミが追いつかない。  作者: 高瀬さくら


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68.聖女はとうとう告白されるの

 朝日がバルコニーに差し込む。木々の上に覗く太陽が橙から黄色へと色を変えていく様は心が洗われる。レジーがアリスの肩に手を伸ばすから、雰囲気で身を寄せてしまう。


(いいのかな……)


 レジーさんルートになってるかも。


「……明けない夜はない」

「アリス?」

「私は病院で夜勤をしていたんです。どんなに忙しくて荒れた夜でも、『必ず朝は来る、仕事は終わる――明けない夜はない』、そう信じて乗り切るんです」


 勤務表を見てまず確かめるのがメンバー。夜勤は二人か三人の組み合わせで、意地悪な人やヤバい人と一緒の日を見つけると、ものすごく憂鬱だ。


 なにしろこの仕事は一人で出来ない。薬のダブルチエックや入院が来た時の準備、急変の対応、赤ちゃんが生まれる時は自分が直接産婦のケアをするから赤ちゃんのケアをお願いする。休憩は交代制だから、自分が休憩の時は自分の患者のナースコールを出てもらう、など。


 その時に、仕事を頼もうとするとわざと逃げたり、嫌な顔をしたり、舌打ちする、そんなスタッフもいるのだ。そういう時、言い聞かせる。


 ――明けない夜はない。いつかこの勤務は終わる。それは真実だ。

 ちなみに、そういう相手は楽な患者を受け持ち、こっちに大変な患者を持たせる。勝手に休憩をとってきて、こちらが相手のナースコールを出ざるを得ない状況を作る、そして素知らぬ顔で戻ってくる、など。


 なのに、こちらには休憩どうぞ、とも言わない。アンタの休憩なんて、私は知らないわよ、と全身で無視する。


 闘いが必要だ。


「アリス……」


 そんな勤務のことは打ち明けずに、もっとこの世界の事、一般的な台詞に当てはめる。


「この世界も平和を取り戻します。だって、私はそのために呼ばれたから」


 あら、我ながら聖女らしい言葉。肩を抱くレジーさんの力が強くなり、それから彼の方を向かされる。金髪が彼の頬をながれ、緑の目がアリスをのぞき込んでくる。


 ヤバい人でもいい、美形だから。


「アリス。――魔王を倒したら、聖女の君に願いたいことがある」

「レジー」


 ああ、これか。第三者的な視点では切ない目で見つめ合っている自覚はあるけれど、とうとうきましたか。これで、私はもう癒しを失くすのかしら。妹さんを蘇らせる? は、できないのか。確か魔物はもとに戻せないんだよね。


 サラさんを助ける? ていうか、彼女ももう魔物になってるのでは?


「言ってください」


 そして砕けよう、そして逃げよう。この世界から。


「――魔王を倒したら……もとの世界に帰らないで欲しい」

「……え」

「君は、役目を果たし帰ってしまうかもしれない。けれどここに残って、俺と共に生きて欲しい」

「……」


(ちょーまともだ)


 呆けてしまった。今まで酷いことしか言われなかったから。恋愛モードになったの?


「あ、あの。レジーさんと一緒に、って」

「何もない俺でもよかったら。苦労はさせない、必ず君を幸せにする。だから――」

「レジーさん!!」


 ぜひ、と言おうとしたところでいきなり金色の粒子に包まれる。アリスの体が発光してその粒子の中でナース服が溶けて今度はレオタードがへばりついた。


「……」


 なんだよ。レジーさんが一歩引いて、アリスの前に立っている。……いいところだったのに、嫌がらせ?


 変身が解け、またむちむちレオタードになったアリスを、困ったようにレジーが見ている。


「あの……」

「性急すぎたのかな。聖王陛下からのお叱りかもな」


 苦笑するレジーさん、そんなあほな聖王なんてどうでもいいです!!


「あの、私は返事を」

「返事は魔王を倒してから貰うよ」

「いえ、倒す前に! 今、返事をします、イエスです、イエス!!」


 鞭があった手にはワンダラホン。そうか、これが変身アイテムか。聖王に今すぐ「イエス」を伝えようと履歴の“聖王”に折り返しをかけてみたが、『ツー、ツー、ツー』という音。繋がらないのか、もしくは電話中かは不明だ。


「アリス?」

「あの時、かかってきた電話に出たら変身したの? 相手、聖王だって」

「聖王陛下が!?」


 そうだ。レジーはさらっと聖王の名を会話に出していた。これまでの会話に出たことないのに。コイツ何なの。


「レジーさん、知ってるの?」


 レジーに促されて大広間に戻る。朝になったら燃えていたはずの城は全く元の通り。絢爛豪華なボールルームには誰もいない。


 これって、また夜になったらエンドレス化け物が出てくるんじゃないかな? 本当に解放されたの?


「大丈夫だよ、……魔の気配が全くないから」


 そういうもの? 何となく詰まってしまったレジーさんを見てあることに気づく。


「サラさんは、魔の気配、とかがわかる?」


 レジーさんはゆっくり頷く。そうなんだね、私は相変わらずです。


「でも、サラは変身できなかったし、戦えなかった。今日、君は聖女の力を覚醒させた。彼女と比較することはないよ、アリス」


 サラさんは、本を開いて魔法を唱えていたのですよね。私は、エロナース服で下手くそな鞭をふるっていたのですよね……。


「そういえば、サラさんから留守電があったって」

「ごめん、俺は……取り返しのつかないことをするところだった」


 本当ですよ、あなた目がマジでしたよ。告白イベントで思わず返事しちゃったけど、この疑惑を晴らさなきゃ。


 マジで私を生贄にしようとしていましたよね。まさかまたのっとられていたんじゃ……。アリスは銀の皿でレジーを照らそうとして、ハッと気づいた。


「ない、皿がない!」

「イヴァンが持っている」


 そう言えば。


「――そう、俺のことをお前は忘れていた」

「……!」


 後ろから呪いをかけそうな声が響いて、アリスは飛びのいた。そこにいたのはイヴァンだ。


「なんで!!」

「それは俺が聞きたい、なぜおまえは俺のことを忘れる!」


 大広間にみんなが集まっている。なんでみんな、夜の戦いに出てこなかったのよ。


「イベント中は出て来られない」

「……何をしていたの……」


 首を振るのは、自分たちもわからないの? それともながめていたの?


 ひどい、さんざんだ。この人たち聖女の私を酷い扱いだ。第三区……も怖いから、第四区の人たちに会って、まともだったらあちらのパーティに参加しよう。でもこのぶんだと、変態だろうな。


「アリス。教会のシステムなんだ。このイベントが終わるまで彼らは待機していたんだ。だからアリスも忘れていた」


 レジーさんもイベント! さり気なく言った。悲しいエピソードなのに。いやエピソードじゃないだろ。でも、イヴァンたちに邪魔されなくてよかった、かな。じゃなくて、レジーが本物かが重要だ。


「イヴァン、ところでその皿でレジーさんを照らして」

「なぜだ」

「ちょっと色々」


 レジーさんは無言で、みんなも無言で、なんか変な気配だけどイヴァンが彼にむけて銀の皿を向ける。自分たちはその巨大銀の皿を見てみるが、彼の美しい姿かたちは変わらない。あ、裸には目をそらす。そういえば、装備は映らないのだった。


「俺も見たいのか?」

「いいえ」


 イヴァン、本当に変態だな、いや自己主張が激しいな。話が面倒になるからやめて。じゃあレジーさんは乗っ取られていたわけではないと。


「それよりも、何があった! お前の変態度が上がってる」

「え、Sドじゃないの!? Mドが下がってない!?」

「変態度だ。このままじゃ変態ルートへ移行するぞ」

「ちょっと待ってよ、変態ルートはみんなが変態だからでしょ!?」


 首を傾げるみんなに、話を終わらす。色々突っ込みたいことがたくさんあるけど、まず地下にいくことになった。

 

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