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聖女アリス、異世界で溺愛されてるけどツッコミが追いつかない。  作者: 高瀬さくら


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48/73

48.聖女はキモイ聖女グッズをつくれそうなの


「待った」


 不機嫌なイヴァンの声、そしてイヴァンはアリスを見る。上から下まで見て、またもう一度上から下まで見て胸元で目を止める。やめて。


「むらむらアップしたよね」


 その目は何も映していない、大丈夫かなと思ったけど不機嫌に寄せた眉から、あ、ヤバいと思った。


「――大きなマントを購入しよう」

「サイズアップ効果もあったんだ、脱ぐとすごいよ」


 ヴィオラ煽らないで。あなたのはもう確信犯だと知ってるから。


「脂肪も増えたのか」

「そうです、胸は脂肪です。むらむらする意味はありません。胸から下に落ちればお腹の脂肪。脂肪の場所で気持ちが変化するのは変。それにどっちみち二区は魔物しかいないから人には会わない、いいのこのままで」

「金のかかる女だ」


 むかっとしたけど、イヴァンの表情は嫌みではなくアリスをじっと見ている。何を考えているの? 


「――もういいよ。このレオタードでいくから」

「いい。次はビキニアーマーだ」

「なんだーイヴァンも気になってたんじゃん。もしかして――欲しかった?」


 言わないでヴィオラ。生真面目で黙るイヴァンがそう思っていそうで怖い。


「お前にはお似合いだ。いい気がしてきた」


 ほら!


 褒められてる気がしないんですけど。ていうか、最初は反対だったのに――。


「アレの購入者は男性が九割だからね。イヴァンも欲しくなっちゃったんでしょ。レオタード効果だね!」


 ヴィオラがパンと手を打って喜んでいる。ああ、私の安らぎはもはやレジー様だけだ。


 またむっとしているイヴァンとアリスは睨み合う。その横にコーヒー牛乳とフルーツ牛乳の自販機があってちらちらと目が行く。確か日本はもう販売中止になったんだよね。


「飲みたい。買って」

「なぜ俺が……」

「むらむらした罰」


 なぜかイヴァンは大人しく自販機に向かい背を向けて何がいいか、と聞いてくる。え、マジで?


「アリスはだんだんイヴァンと仲良くなってきたね」

「……まじで」


 マジでむらむらしたの? 無果汁と書かれた瓶のフルーツ牛乳を貰いながらアリスはイヴァンを見た。イヴァンはわざとらしく顔をそらす。その顔が赤い気がする。え、マジで。



「――ところで、聖女の湯を持って帰るぞ」

「なにそれ」


 と、イヴァンが玄関横に積んであるボトルを二つ取る。瓶で重そう。


「一グループ様、お二つまで」と書かれている上には聖女が浸かった聖なる温泉とある。


「何、これ」

「お前が浸かった湯だ」

「……さっきの?」

「怪我や体力、魔力の回復効果がある。持って帰るぞ」

「ちょっと待ってよ! 私が浸かったからって……まじで」


 イヴァンは既に先ほどの戸をからからあけて、とぷんと浴槽に瓶を入れてお湯をつめる。あっという間に一升瓶二本を持ってきた。


「ソレ、どうするの」

「飲む。ローランに飲ませれば回復するだろうし、今後俺達にも何かあれば回復する、エリクサー並みの回復力が期待できる」


 ちらりと掲げて見せられた瓶の中のお湯にはチラチラ白いものが浮かんでいる。湯の花かもしれないけど、湯垢かも。いや、その前にエリクサーってさ。チラチラ違うゲームの名が入ります。


「キモイ」

「自分がこれまで浸かっていた湯だろう」

「そう、だけど。人が入った湯だとか、そういうのは目をつむって入るもんだし」


 飲むのは別だ。


「それに! 私が浸かって効能が出るなら! 冒険しなくても稼げるし。わざわざ持って行かなくても、どっかでお湯につかればいいじゃん」


 聖女の湯、製造メーカーになれる。


「聖布や、聖杯やいわゆる、聖女が着た衣服やコップや箸やベッドや布は聖なる力があるが売ってはいけないことになっている」

「そうなの!?」

「だが、まだ聖女と認められていないから力が宿らない。これは温泉だからだ」

「――若干こじつけ」

「とにかく行くぞ」


 イヴァンは背を向けて行ってしまう。


「あ。どうせなら帰りにしたら。これから教会に行くんだよね?」


 わざわざ行きに持って行かなくても。


「帰りはルートを変える可能性もある、それに教会には一度行った場所に戻れる転移陣がある」

「え。それこそRPGだね」


 便利! ようやく移動が徒歩じゃなくなる。ガッツポーズのアリスをイヴァンは冷たい眼差しで見返す。


「が。その転移陣は聖女じゃなきゃ使えない。お前次第だ」

「なんと!」

「だから当初の目的通り聖女の力を習得しろ」



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