表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女アリス、異世界で溺愛されてるけどツッコミが追いつかない。  作者: 高瀬さくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/73

25.聖女は年齢検討をするの

「街だ!」


 ここまでは、魔物に遭遇しなかった。比較的出現が少ないルートを選んだというのでありがたい。


「気を抜かないで行こう。街の近場は警邏がいるから盗賊や魔物が出る可能性は低いが、街道を往く人間狙いで罠を張っている場合もある」


 ローランドの声に皆が頷くものの、皆の足がはやる。その時、イヴァンが背負うアリスに向かい囁いた。


「これまでの聖女は皆が、十代だった」

「――え?」

「本人達が言うのだから、それを信じるしかない」


 イヴァンの言葉はどういう意図があってのことだろう。


「大抵は、言いよどんでいた。だから本当かはわからない。お前も本当のことを言う必要はない」 

「……聖女の資格に年齢は関係あるの?」

「それは、教会じゃないとわからない」


 イヴァンに尋ねる。ふと、この態勢の時にすべてを尋ねてしまった方がいいのじゃないかと思う。それぞれに聞きたいことはあるのに、大勢だと聞けなくなる。


「――あの」「ただ」


 訊きたいことがわからないまま口を開き、イヴァンと重なる。


「……」

「ええとどうぞ」


 ――カーン。


 鐘が鳴り始める。魔物が出るこの世界では、日が落ちる前に街門を閉ざすという。


 夜は魔物の出現が盛んになるが、街中は魔法障壁で守るため入ってこられない。

 ただ、門を閉ざすと朝までは開かない。その閉門の合図だ。


「早く、急ごう」


 ローランドの合図に皆が足をいっそうはやめる。


「――この世界の理では、婚姻年齢は大人とみなされる十八歳からだ。種族により数え方は異なるが人間年齢に換算してだ。それは魔族に関しても言える」

「聖女を得た者は、という例のやつ?」


 つまり婚姻がわかりやすい例なの? そして魔族とも結ばれるの?


「魔獣は知能がない。魔族はそれよりの上位存在。人間と同じ知能、ただ聖王の加護からはずれ、魔王に(くみ)し邪悪な力を身につけた者達」


 魔族もいるの!! そんなのきいたことない。そして聖王って何!?


「聖女なのに知らん――は、もう言い飽きた」

「私も、聞き飽きた」


 教会での教えは本当に大事なのね……。


「教会は聖王をあがめ、聖女は聖王の力の代行者。教会や聖女は何をあがめていると思っていたんだ」


 ……本当だね。だって。ラノベでも聖女がなんなのか、そんなの誰も気にしてないもん。ワンファンでもそんなヤツ(聖王)でてこなかったもん。


「聖王様はどこにいるの?」


 イヴァンはため息をついた。それ私の知らなささについて?


「いや、お前は本当に教育が必要だと思っただけだ」

「教会じゃなきゃわからないというくせに。あなたが教育してくれるとでも?」


 その後ろ髪をひっぱってやりましょうかね。鎧に守られた身体は、隙間がない。他にはダメージをあたえられない。

 彼が首をめぐらして、アリスと目を合わせる。夕日に反射してその赤い目はガーネットのようで綺麗だった。


「お前がしてください、と言えば教育してやるが?」

「――いい、です。いいです! しなくていいです」


 なんかその教育が、不明です。彼はフッと鼻でわらった。嫌みではなく、色気があるのはなんででしょう? どうしてそう感じるようになったのは自分の頭がおかしくなったから?


「ことごとに丁寧に優しく説明してやろうと思ったのだが?」

「――本当?」


 言葉だけを聞けば、ありがたい。教育つまり知識の伝授。でも、その口元をあげて、楽し気で意地悪な目はなんですか?


「調教、ともいう」

「やめて、いい、やめて!!」

「おれはそういうことが嫌いじゃない。教えてやる、そう言っている」

「……あなたが言うのは怖いのよ」


 彼は落ちてきたアリスを身体をゆすり抱え直す。早く靴が欲しいです。足がぶらぶらしているのも、股を広げているのもいやだけど、抱え直されるたびに重いのかと気になる。


これ(背負う)のも慈善活動だと思ってるのか?」

「聖女の騎士になりたいからでしょ? 打算」

「お前が、俺のこと以外考えられなくなったらどんなにいいか」

「…………え」


 その台詞怖い、DV男性というか、粘着質で執着男の典型と思ってもいいのに。イケメンじゃなければ、即逃げていた。いやイケメンでも逃げるべきでしょ。だって足をホールドされてんだよ。


 でも後ろからアリスを抱える彼はあまりにも格好が良すぎる。とはいえ前を振り向き直した彼の顔は見えない。目の前の地平線に沈む夕日に照らされる黒髪。哀愁漂う声に、まるで愛の告白をされてじゃないかと錯覚しそう。


「――聖王は行方が不明だ。だから魔王及び魔物が跋扈している」


 彼が唐突に話題を戻す。そこに今の言葉は問えなかった。だからアリスも会話に意識を引き戻す。


「魔王よりも、聖王様をさがしたほうがいいんじゃなくて?」

「……聖王が、出てこないのは理由がある、と考えている」


 アリスは黙る。つまり殺されている、とか? そのへんも教会あたりで教えてもらっていたのかも。


「とにかく、身を守るために年齢設定は慎重にしろ。その場その場で変えるな、それを押し通せ」

「十六、とかにすれば手を出されない?」

「お前は十六歳には見えない」

「……」

「ヒューは見る目がない」


 はいはい。


「そうじゃない。獣人の血を引く女性を見ればわかる。あいつはその身体の発達具合から判断しているんだ」


 グラマラスなお姉さんかな? 何となく豹耳とか尻尾を付けている胸の大きなお姉さまを想像するけど、ヒューだって外見は普通だ。ただのイメージは失礼だ。


「かといって、若すぎると舐められる。幼女より、成人女性を欲しがるのも魔族は同じ。その塩梅を考えて設定しろ」

「成人女性を得て、何をする、と?」

「自分のモノにできる。魔族とも女性は婚姻できるんだ。それを本人が望むかは別だが」


 こわ。ラノベより成人ゲームの闇落ちみたい……。あれ、私なんかそんな光景をみたような。二十五、二十三……二十? 若いのと若くないの、どちらが有利? 十八ぐらいにしとこうかな。


「……何歳ぐらいがいいと思う?」


 アリスが問うと、彼は黙る。一度身体をゆすりアリスを背負い直してから口を開いた。


「そんなことは、自分で考えろ。大人だろう」

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ