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1.聖女はイケメンの夢を見るの

 ――私は、縛られていた。

 動くとガシャと音がする、同時に手首に鎖が食い込み嫌な鉄臭さが鼻をつく。闇に目が慣れてくると、手首には鉄環が食い込み、引いても痛いだけ。一定距離以上前に動かせないのは不自由な腕輪の先が、恐らく壁に埋め込まれているから。


 足かせも同じだった。裸足の足首に冷たく思い鉄環が食い込んでいる。

 そして胸と腰を結ぶ縄、私はいやだと抗うけれど、身体に食い込んでくる。


 ふと視線を感じて目をやれば、奥の椅子に座った男がいるのが見えた。まるで玉座のように堂々と座った体躯の持ち主と目が合う。


 いつの間にか闇の中には炎が灯り、見事な体格の男性の姿が照らされる。日本人では見たことがない二の腕は盛り上がった筋肉で覆われ作られて、謎の入れ墨が彫られアクション映画俳優のよう。


 男が自分と目が合ったと同時に立ち上がり、こちらへと歩んでくる。


「まだ、我が元に下る気はないか、聖女よ」


 上半身は薄布に覆われ腕だけじゃなく、胸もお腹も見事な筋肉に覆われている。顔は左右対称で、高い鼻梁、赤い眉は整い、目は彫りが深く顎の線は太いがシャープ。

 まるでファンタジーの王様のような豪胆さを前面に出したかなりのイケメンだった。


 けれどその目は残忍な色を宿している。声はお腹に響いてくほど低く迫力がある。


 その迫力に思わず顔をそむけると闇から現れたように背後から男性が来て、私の後ろへと回り身体を拘束する。


「魔王様だ。動かないように」


 抱きしめられて、耳元でささやかれて私は体を震わせる。彼が下着をつけていない薄布を纏っただけの私を抱きしめる。逞しい手が胸や腰にまわされ怖いというより、心臓が期待して跳ね上がる。



 横目で見た彼は、金髪で麗しい。目の前の男性より、美麗というべきか、私は怖いよりも横目でみたその美貌に声を失くしていた。


 けれど、恐ろしい覇気を宿した男性も目前まで迫っていた。彼は私の顎を取り、正面を向かせ唇が触れるほど近づけて囁く。


「聖女よ――」


 二人の男性に囲まれて、私はあえぐ。


 そのとたん――ぱちりと目が覚めた。

 

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